『シシリアン・ゴーストストーリー』(123分/伊仏瑞西/2017)
原題 『Sicilian Ghost Story』
イタリアのシシリー島を舞台にした『ロミオとジュリエット』のような恋物語であるが、この島はマフィアの発祥地であることを忘れてはいけない
少年少女のプラトニックな恋物語の中にイタリア社会に根付く問題を織り交ぜている
この映画の予告は若い少年少女のプラトニックなラブストーリーを予感させた。しかしその期待は見事に裏切られた。正直、とても重い映画だった。特にエンディングが、、、、。トップカットは水の落ちる音。共鳴の仕方で多分洞窟なのかなっとわかる。薄暗い鍾乳洞から一変してシシリー島の明るいカラーに変わる。美男美女の二人が森の中で戯れる。話はそれるがこのシシリーの森は日本の森に似ていると思った。おそらく広葉樹であろう樹々がひこばえしているからだ。日本の森のクヌギ、アベマキっぽいからおそらく昆虫がたくさんいると思われる。実際、蝶々などの昆虫が映し出されていたので多分、日本の緯度に近いのではないだろうか。
さて、話は戻るが、このルナという少女はジュゼッペに猛烈に恋しているのがわかる。ジョゼッぺも行為を持っているがちょっと焦らしたりする。ルナの母はとにかく厳しい。厳しいというより冷酷なのだ。劇中、一切笑っていない。ルナの人格を否定する。恋の邪魔もする。なぜ邪魔をするのか少しずつわかる。ルナの恋する相手の家族がマフィアに繋がってるいるかもしれないからだ。一般人女の子とマフィア組織系の恋物語と来れば報われない『ロミオとジュリエット』になる。そしてある日から少年が学校へ来なくなる。ルナは毎日少年の家へ行くが親は会わせてくれない。先生にも街の人にも行方不明を伝えて探そうとするが、誰も手伝ってくれない。みんな関わりたくないからだ。ルナの母親は探すのをやめさせようとするが、ルナは諦めない。
全てを対比させることで恐ろしさを引き立たせている
時折、ルナの精神がおかしくなったかのような演出がある。ジュゼッペに会い抱きしめ合ったりするのだが、それらは幻想だ。実際には会えていないと後半にわかる。この物語はイタリアで起きた実際に物語をモチーフにしている。凄惨な事件を恋物語にファンタジーな演出を加えて構成されている。芸術性も高い。冒頭に挙げたが音の使い方が絶妙だ。水の音、風、虫、鳥、犬などの自然音と機械的な音が無意識に入ってくる。映像も暗から明への使い方が抜群である。このように対比させることで現実と幻想がうまく生かされファンタジー感が出てくる。このように残酷な事件だからストレートに描くよりこういった対比を使った方がより心に深く残ることを計算されているようだ。
イタリア人にとってマフィアネタは禁句と言う。彼らの話をすること自体が命の危険をもたらすそうだ。だからこの映画のように街の人も学校の先生も関わらないようにしている理由がわかる。この映画自体が命がけで製作されたのだろうが、はっきりとマフィアとは言っていない。ただエンディングクレジットにモチーフとなった事件について書いてある。それを読んでとても憂鬱になった。
良い映画だと思う。もう一度観ると思う。
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スタッフ
監督
アントニオ・ピアッツァ
ファビオ・グラッサドニア
製作
ニコラ・ジュリアーノ
フランチェスカ・シーマ
カルロッタ・カローリ
マッシモ・クリスタルディ
製作総指揮
フランチェスコ・タト
原作
マルコ・マンカッソーラ
脚本
アントニオ・ピアッツァ
ファビオ・グラッサドニア
撮影
ルカ・ビガッツィ
美術
マルコ・デンティッチ
衣装
アントネッラ・カナロッツィ
編集
クリスティアーノ・トラバリョーリ
音楽
アントン・スピールマン
キャスト
ユリア・イェドリコブスカルナ
ガエターノ・フェルナンデスジュゼッペ
コリンヌ・ムサラリロレダーナ
アンドレア・ファルツォーネニノ
ビンチェンツォ・アマートルナの父親
サビーネ・ティモテオ
作品データ
原題
Sicilian Ghost Story
製作年
2017年
製作国
イタリア・フランス・スイス合作
配給
ミモザフィルムズ
上映時間
123分
映倫区分
R15+