『ザ・プレイス 運命の交差点』(101分/伊/2017年)
原題『The Place』製作年 2017年
この男は一体何者なのだろうか、何を生業にしているのか
この手帳の中身が気になる
この男は一体どうやって生計を立ているのだろう?何と思ってはいけない。映画とはこういうものだ。この男カフェの経営者か、いや違う、占い師か、それも違う。暗殺者か、違う、では預言者なのか。それも違う。この男は朝から晩までずっとカフェ『THE PLACE』の奥の席に座って何やら書いている。そして彼のものに次々と客と思われる人々が訪れる。
人間の悩みは単なる欲望に近い
訪れる人々はそれぞれに悩みを持っている。その悩みは彼らにとっては人生の岐路に立つような内容だ。「息子の命を救ってほしい」「ピンナップガールと寝たい」「夫を振り向かせたい」「美人になりたい」「神を感じたい」等々。それらの目的を達するために彼らはこの男の元へ相談に来るのだ。しかし男の指示は実に困難なものばかりだ。「少女を殺せ」「爆弾をしかけろ」「女を強姦しろ」等々。しかしどれも犯罪者になるような指示ばかりで怒り心頭になって皆カフェを後にする。
手帳に書いていることは本当に意味があるのか
男はずっと手帳を広げて何かを書いている。そして依頼者に指示する時に手帳を広げてそこに記された指示を伝える。「ここに書いてある」と言って。果たして本当に何が書いているのかは私は日本語しか読めないのでわからない。男はペンを走らせているから何か書いていると思われるが、その内容が果たして彼らに向けてのメッセージなのか、それとも単なる日記なのかさえ疑いたくなる。
場面数が少ない映画で成功するには脚本の良し悪しで決まる
何日にも渡って繰り広げられるカフェでの相談会は次第に皆の相談が一つのまとまりを作り出していく。グッと物語に吸い込まれていくのだ。断っておくが映像はずっとカフェの中と時折、外観を映し出す以外は、一切の余計は場面は存在しない。それなのに相談者の背負う問題が映像として見えてくるから素晴らしい脚本であると言っていい。この一箇所だけで完結する映画は『ギルティー』がある。こちらも秀作で一切の飽きがこなかった。両作とも少ない予算の中で如何に面白く仕上げるかが腕の見せ所になるから相当の力量が必要だ。
謎の男は神の言葉を伝えている
さてさて、それぞれの相談者が抱えた問題は良くも悪くも片付けられていく。男は終盤になるともうぐったりと疲れきっている。ふと感じたのは男の持つ手帳はひょっとしたら聖書なのではないかということだ。現代の聖書だ。男は神の声が書かれた手帳を開き何かを書いているフリをしている。神の言葉を伝えるのだから罪の意識は存在しない。ほぼ強制的だ。
伝えることが仕事であるなら謎の男の仕事は成功したと言える
最後の最後に男は「疲れた」と漏らす。ここでわかった。この仕事は現代の宣教師ではないだろうか。男は手帳をカフェのウエイトレスの渡す。次なる宣教師はこの女が担うのだろう。つまり男は新たな宣教師を見つけたことで任務完了となるのだ。実にうまくできている。
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スタッフ
監督 パオロ・ジェノベーゼ
製作 マルコ・ベラルディ
製作総指揮 ノエル・ブライト スティーブン・A・コーエン
原作 クリストファー・クバシク
脚本 パオロ・ジェノベーゼ イザベル・アギラル
撮影 ファブリッツィオ・ルッキ
美術 キアラ・バルドゥッチ
編集 コンスエロ・カトゥッチ
音楽 マウリツィオ・フィラルド
主題歌 マリアン・ミラージュキャスト
バレリオ・マスタンドレア謎の男
マルコ・ジャリーニエットレ
アルバ・ロルバケル修道女キアラ
ビットリア・プッチーニアッズッラ
ロッコ・パパレオオドアクレ
シルビオ・ムッチーノアレックス
シルビア・ダミーコマルティーナ
ビニーチョ・マルキオーニルイージ
アレッサンドロ・ボルギフルヴィオ
サブリナ・フェリッリアンジェラ
ジュリア・ラッツァリーニマルチェラ婦人作品データ
原題 The Place
製作年 2017年
製作国 イタリア
配給 ミモザフィルムズ
上映時間 101分
映倫区分 G