映画『ジャスト6.5 闘いの証』ネタバレ・あらすじ「イラン映画は思慮深い」感想「サイード・ルスタイ監督恐るべし!」結末「麻薬汚染と死刑執行の是非」

映画『ジャスト6.5 闘いの証』ネタバレ・あらすじ「イラン映画は思慮深い」感想「サイード・ルスタイ監督恐るべし!」結末「麻薬汚染と死刑執行の是非」 2019年製作
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映画『ジャスト6.5 闘いの証』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品情報・概要・キャスト・予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。

映画『ジャスト6.5 闘いの証』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。

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『ジャスト6.5 闘いの証』
(2019年製作/134分/イラン)
原題『Metri Shesh Va Nim』
【監督】
サイード・ルスタイ
【脚本】
サイード・ルスタイ
【撮影】
フーマン・ベーマネシュ
【音楽】
ペイマン・ヤズダニアン
【出演】
ペイマン・モアディ
ナビド・モハマドザデー
ファルハド・アスラニ
パリナズ・イザディアール
【HPサイト】
映画『ジャスト6.5 闘いの証』公式サイト
【予告映像】
映画『ジャスト6.5 闘いの証』トレーラー

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』のオススメ度は?

4.0

4つです

めちゃくちゃ「面白い」です

圧巻の会話劇です

心理戦が癖になります

イラン映画「恐るべし!」

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』の作品情報・概要

『ジャスト6.5 闘いの証』 原題『Metri Shesh Va Nim2019年イラン製作のクライム映画。サイード・ルスタイ監督作品。ペイマン・モアディ主演。ナビド・モハマドザデー、パリナズ・イザディアール出演。 イスラム教を国教とするイランでは麻薬汚染が深刻となっている。イラン警察と麻薬組織の倫理なき戦いの心理戦を中心に繰り広げられる。イランの麻薬汚染と劣悪な刑務所環境も露見した画期的な映画と言える。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』のあらすじ・ネタバレ

イスラム教を国教とする国イランでは近年、麻薬汚染が社会問題となっている。薬物依存者が溢れ返る街は荒れ果て、ホークレスがたむろしている。イラン警察は薬物撲滅警察特別チームを結成し、サマド・マジディ(ペイマン・モアディ) をリーダーにして、ガサ入れを行う。狙いは薬物売人の頂点に立つ大物ナセル・ハグザト(ナビド・モハマドザデー) の逮捕。あらゆる手を尽くし、ナセルの隠れ家である高級ペントハウスに乗り込む。しかし捜査情報を入手したナセルは大量の睡眠薬を服用し、自殺を図った。辛うじて命をとりとめたナセルは劣悪な刑務所へと送られる。そしてサマドに多額の賄賂を提示して命乞いするが、、、。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』の感想・内容

「新境地を切り開くイラン映画」誕生です。本当に素晴らしい映画でした。イラン映画は世界的にもレベルが高いことを改めて認識しました。ただ日本人の一般的な映画ファンはイラン映画に興味を持たない人が多いと思います。それは欧米の映画が全てのような風潮があること、そして多額の宣伝費をかけていますから、小規模なイラン映画は注目されないのが現状です。でもかれこれ30年以上前からイランの映画監督は世界中に感動と涙の嵐を巻き起こしたことを明記しておきます。最も有名なのはやはりアッバス・キアロスタミ監督の『友だちのうちはどこ?1987年)でしょう。本当にシンプルな物語です。友だちのノートを間違えて持ち帰ってしまい、それを返そうと奮闘するお話です。わたしの一番好きな映画と言っても過言ではありません。キアロスタミが世界の映画界に与えた影響は計り知れないです。その後、イラン出身の映画監督は続々と登場して、映画界を席巻します。アメリカの映画監督とは一味も二味も異なります。人間の喜怒哀楽を主軸に人生について考えさせる物語で構成される作品が多いです。誰にでも当てはまる「普遍的な物語」なのです。

近年も新しい才能が登場しています。映画『ボーダー 二つの世界』のアリ・アッバシ監督の思想と感性には圧巻されました。非常に哲学的というか、超未来的な発想を想起させずには要られませんでした。イラン及びイラクはアラビアンナイトの発祥の地です。千年以上も前に書かれたたくさんの物語があります。それらを読むとまるでおとぎ話のような感覚に陥りますが、人間という生き物は「何も変わっていない」と痛切に感じます。今も昔も人間が一番悩むことは「人間関係」に行き着きます。妬み、嫉み、憎悪、不安などを源流に起きる感情から建設的な事柄は生まれません。もちろん、わたしたちは分かっているのですが、いつも心穏やかにして、謙虚で、感謝の気持ちを持ち続けることは難しいです。世界のフィルムメーカーたちもイラン発祥の物語を映画にして恩恵を受けています。ディズニーはその最たる例です。映画『アラジン』もそうです。その他にもたくさんありすぎて紹介できません。

さて、本映画『ジャスト6.5 闘いの証』の何がそんなに素晴らしいのかについて書きます。まず挑戦的であること。次に思慮深いことが挙げられます。挑戦的というのは、イランはイスラム教を国教とする国です。故に映画製作における表現には厳しい検閲が待っています。特に女性が大々的に出演する映画製作は難しいと言われています。そして政府批判を含んだ内容は完全にNGです。しかしイランの映画監督はバカではありません。キアロスタミは子どもを主人公に置くことで、表現を和らげて世界に打って出ました。イラン政府も「映画は外貨を稼げる」と認識する結果になったと思います。以後のイランのフィルムメーカーたちは「あの手この手」を使って、検閲から逃れて映画を作ってきたのです。政府も批判的だと分かっているけれど、彼らの才能を認めての映画輸出だったのではないでしょうか。ここに挑戦的な理由があります。

次の思慮深い映画の理由は、映画を鑑賞している時も観終わって家へ帰ってからも、物語について考えさせられるのです。「子どもは宝物」とか「頑張っている人を応援したい」とか「人間の強欲は恐ろしい」など、人生の舞台を歩いているわたしたち自身を客観的も主観的にも見つめ直すことができるのです。とても深く考えてしまいます。アメリカ映画のアクション作品も良いのですが、ただ「スカッと」することが多く、以後の人生に影響を及ぼす映画ってそんなにありません。でも、イラン映画は本当に心に染み込んでくる作品が多いのです。思慮深く考えた結果「優しい人間」になれた気持ちになれます。

さて、本映画『ジャスト6.5 闘いの証』の特徴は会話劇となります。近年、アメリカのテレビドラマや映画などでは、役者同士のセリフの連呼・連打がみられますが、発端はまさにイラン映画だったと言われています。しかも、本映画『ジャスト6.5 闘いの証』でのセリフには甘い言葉で誘惑したり、虚言を並べて、相手を陥れたりします。「それは違うだろ」と思っても、巧みな話術に誘導されて、観ている方も納得してしまうのです。これは本当に見事な脚本です。一見、屁理屈のような言葉も比喩的に言い放って、相手の心を惑わせたりすることで、真実へと向かうのです。奇を衒うと言い方がありますが、その更に上を行く高等テクニックがあります。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』の考察・評価

わたしの友人がイランを旅行した時に経験した出来事語ってくれたことが忘れられません。彼は街角の屋台のようなところで、簡単な食事をしたそうです。156歳くらいの少年が作っていました。そしていざ飲食代を払おうとすると、思ったより高額だったため文句を言ったそうです。日本円にするとわずか数円を負けろという金額ですが、貧乏旅行者にとっては死活問題ですから必死です。一通り、日本人のクレームを聞いた少年は「あんたの夢はなんだ?」と聞いてきたのです。友人は「俺は世界中を旅して、色んなことを見聞きするのだ」と胸を張って答えました。少年はフッと笑って「あんたは小さい男だ」と言いました。友人は内心「このクソガキめ、何を言いやがる、お前は所詮、屋台だけが世界じゃあないか」と思ったそうです。もちろん、そこには差別意識があります。そして少年を黙らせようと言葉を発する瞬間、少年が空を見上げて「宇宙は広いんだ。もっと大きな夢を持てよ」です。友人は何も言えなかったそうです。撃沈です。そして多めの支払いをしました。

イラン人の哲学的な思考の一旦が見え隠れする出来事でした。彼はホテルへ帰る道中、ずっとこのやり取りを考えていたそうです。そして途轍もない羞恥心に包まれたそうです。まず、人を見た目や置かれた立場によって差別してしまうことを恥じました。そして、賢者には年齢は関係ないこと、さらに長い歴史の中で育まれたイラン人の底知れない哲学に感銘し、以後、友人は大のイランマニアになりました。本映画『ジャスト6.5 闘いの証』を観ているとそんなことを思い出さずには要られませんでした。

さて、わたし的に本映画『ジャスト6.5 闘いの証』にはイランという国の等身大に近い状況が撮影されていると思いました。一番は最後の最後に「死刑執行される」ところに行き着きます。死刑執行においては世界中で禁止へと向かっています。日本は相変わらず執行されています。重罪を犯した者の末路という理由で死刑に処されますが、やはり21世紀においてはいささか野蛮的な行為だと思います。もちろん、犯罪被害者の遺族にとっては憎っくき犯罪者ですから、死刑を望む気持ちも理解できます。でも、憎しみから生まれる感情は心地よいものではありませんし、自身の身体を蝕んでしまいます。本映画『ジャスト6.5 闘いの証』の麻薬取引で大金持ちになったマフィアのボス・ナセル・ハグザト(ナビド・モハマドザデー) はあれだけ凶悪・凶暴だったのに絞首台に連行される時は泣き叫ぶのです。恐怖のあまり狂乱するのです。この場面を描いたサイード・ルスタイ監督の挑戦は素晴らしいと感じました。イスラム教において、自殺は認められていません。もちろん、殺人もです。ただ仇討ち的な内容の仕返しでしたらオッケーと言わざるを得ません。そして死刑を行うのは、おそらく一般市民に対して、犯罪の抑制と見せしめの狙いがあることも否めません。本映画『ジャスト6.5 闘いの証』で死刑の場面が検閲で許されたのは、製作社の「死刑の是非」とイラン政府の「死刑は認める」の両者の利害が一致した結果からでしょう。サイード・ルスタイ監督は世界にイランにおける死刑制度を訴えたかったのではないでしょうか。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』の結末

そして、もうひとつ忘れてはいけないイランの薬物汚染の現状についてです。敬虔なイスラム教徒に国ですから、まさか覚醒剤や、マリファナなどとは程遠い印象を受けますが、600万人の人々が薬物を摂取しているとのことです。流出先はお隣のアフガニスタンからです。2001年から続いているアフガニスタン紛争が端緒になっています。アフガニスタンに潜伏していたオサマ・ビン・ラディンを殺害しようとアメリカ軍があらゆる戦闘を繰り広げた結果、国は荒れ果て、人々も疲弊していきました。そしてすぐさま金銭を稼ぐ最良のモノとして行き着いたのが「覚醒剤」や「マリファナ」だったというわけです。それらは陸路でイランに流入しました。そしてイランは深刻な薬物問題を抱えるようになったのです。

本映画『ジャスト6.5 闘いの証』を観ていると、イギリスと中国のアヘン戦争を思い出さずには要られません。アヘン中毒者が増加した中国は国力が衰えていきます。これがイギリスの狙いだったのです。そのことから推測すると、アメリカにとってイランは目の上のタンコブですから、アフガニスタン紛争の目的とは「イランを崩壊させる」目的もあったのだろうかと思わざるを得ないのです。本映画『ジャスト6.5 闘いの証』ではサイード・ルスタイ監督は大々的に「アメリカ批判」を行なっていませんが、思慮深いイラン人ですから、世界に向けてのメッセージを放っていると思われます。すごい映画でした。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』のキャストについて

サマド・マジディ(ペイマン・モアディ)
ナセル・ハグザト(ナビド・モハマドザデー)
ファルハド・アスラニ
エルハム(パリナズ・イザディアール)

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まとめ 映画『ジャスト6.5 闘いの証』一言で言うと!

「さすがアラビアンナイト発祥の地」

イラン映画は本当に哲学的であり、思慮深く、そして先進的な物語が多いと感じました。長い歴史の中で育まれた国民性がよくわかります。

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映画『ジャスト6.5 闘いの証』の作品情報

映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
サイード・ルスタイ
脚本
サイード・ルスタイ
撮影
フーマン・ベーマネシュ
音楽
ペイマン・ヤズダニアン
サマド・マジディ(ペイマン・モアディ)
ナセル・ハグザト(ナビド・モハマドザデー)
ファルハド・アスラニ
エルハム(パリナズ・イザディアール)
2019年製作/134分/イラン
原題:Metri Shesh Va Nim
配給:オンリー・ハーツ

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