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『 ホテル・ムンバイ』(123分/オーストラリア・アメリカ・インド合作/2018年)
原題『Hotel Mumbai』
監督
アンソニー・マラス
出演
デブ・パテル
アーミー・ハマー
ナザニン・ボニアディ
ティルダ・コブハム=ハーベイ
映画『ホテル・ムンバイ』のオススメ度は?
星3つ。
欧米の人々の目線で作った映画です。
なぜ憎悪が連鎖するのか考えてみましょう。
人は争うことをやめられないのでしょうか?
日本が平和であることに感謝したくなります。
日本も他人事ではない時代になってきたかも。
友だち、恋人、家族と観に行ってください。
映画『ホテル・ムンバイ』の作品概要
2008年のインド・ムンバイ同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・パレス・ホテルでの人質脱出劇をモチーフに製作された。インドを代表する高級ホテルに500人の宿泊客が人質となった。犯人はイスラム原理主義に洗脳された少年たち。映画はホテルの従業員の勇気ある行動を称賛を謳っている。
映画『ホテル・ムンバイ』のあらすじ・ネタバレ
インドの大都市ムンバイ。この街のタージマハル・パレス・ホテルは世界的にも格調が高く、街の自慢でもある。この街とホテルにイスラム原理主義者の少年たちがテロを仕掛け大パニックに陥れる。人質になった500人の宿泊客を救おうと従業員たちはあの手この手で脱出を図る。しかし狂気に駆られた少年テロリストの殺戮は激しくなるばかり、、、。
映画『ホテル・ムンバイ』の感想・評価・内容・結末
映像が与えてしまうネガティブイメージの危険性
この映画を観た人の多くは「本当に酷い」とか「ドキュメンタリーを観ているようだった」等の感想を言います。
わたしも映画を観ている時はあまりにも酷い殺戮シーンに目を覆いたくなったほどです。
そして映画が終わって席を立って出口に向かっているときに年配の女性が「本当にイスラム教は危ない人たちだね」と連れの男性に言った言葉を聞いて愕然としました。
おそらくこの女性はメディアからの情報を一方通行に受け入れてきた人生で、自ら疑問を持って本当の真相について探求しない人だと感じました。
映像が与えてしまう影響力、特にネガティブな印象が流布しないことを願うだけだ。
なぜ少年たちがテロリストになった理由を描いて欲しい
わたしはこの『ホテル・ムンバイ』を観て、確かに残虐なイメージは持ちますが、とりわけ大きなメッセージは受け取っていません。
この映画はいわば今の世界地図で見ると“十字軍側”から撮った作品です。もっと言えば「勝てば官軍」の人たちの作ったイメージ戦略が色濃く出ている映画なのです。
繰り返しますが、戦争は悪い、人を殺すのも悪い、そんなことはわかりきっています。
でもなぜこの映画に出てくるイスラム教の若者たちがテロリストになってしまったのかについてはほとんと描かれていません。
彼らはとにかく貧しいこと、仕事もないこと、腹を空かしてること、親を養いたいこと、神の意志のもと、などと少しは描かれていますが、もっと本質的な理由が皆無なのです。
本質的な理由とは憎悪の源泉はどこで、いつ芽生えたのかです。それが無いのが勿体無いです。
映画は娯楽だけではなく知性教養をつける場でもある
よってこの映画を観た先の女性もイスラム教徒に対してネガティブな印象を持ってしまうステレオタイプ族となるのです。
映画というのはもちろんエンターテイメントでありますが、わずか120分の中で知性教養も身につくのが理想なのです。
逆に映画はプロパガンダとして用いれば人々を圧倒的に洗脳できるメディアと言えるのです。
わたしはこの映画を観ていてあまりにも美化していることに疑問を持ちました(一番がっかりしたのはクレジットロールでこのホテルの宣伝的な言葉が書かれていたところです)
従業員がなぜ自己犠牲の精神になったのか
まず、ホテルが占拠されて人が殺されていきますが、ホテルの従業員が一致団結して宿泊客を守るという気高い使命感には心は打たれました。
でも、でもです。実際に宿泊客を守ろうと奮闘したのはアルジュン(デブ・パテル)とオベロイ料理長(アヌパム・カー)くらいで他の従業員が何をしていたのかは不明でした。ここも勿体ないのです。
オベロイが従業員を集めてまるで志願兵を 募るがごとくお客様の命を守るぞ、と告げたとき「お客様は神様です」とか「このホテルがわたしの家です」と死を覚悟している場面はとっても良かったので、これからどんな活躍が観られるのかを期待しました。
しかもこのホテルの従業員はほとんどインド人です。彼らは低賃金で欧米の人たちに仕えています。その彼らがなぜ、命を投げ打って活動したのかが知りたかったです。
ホテル従業員とテロリスト双方の苦悩を描くべき
でも、結局はアルジュンだけでその他の男性は何をしているのか伝わってきませんでした。監督のアンソニー・マラスは本作が長編デビューなので、他の人物まで気が回らなかったのかもしれません。
欲を言うのであれば、もう一人くらい、インド人従業員あるいはテロリスト少年の苦悩と葛藤をカットバックで描いてくれればもっと重厚になったと思います。
でも、男性スタッフと違って女性スタッフの方が活躍していた様子が描かれていたのは良かった気がします。
また料理長のオベロイは支配的というかとても威張っていました。
その様子を観ているとこう言った危機的な状態で形成されるコミュニティーでも自然と独裁者的な人間が出てくるのだと納得した瞬間でした。
テロ事件が日常化してしまって麻痺してしまう危険性
さて、映画ですがこれは2008年に実際に起きたテロ事件をモチーフにしています。
人間の記憶なんていい加減なもので、わずか10年前のこの事件ですら、思い出せない人もいます。わたしもかすかにしか覚えていません。
なぜ思い出せないかというと「身近にないから」です。そしてその他、あまりにも多くのテロや紛争、事件が起きすぎているからです。
そして何より自分の身に起きたことはずっと覚えていますが、遠くインドで起きたことなど興味を持ちません。
いま現在でも世界のあちこちで紛争や争いが起きていますが、それに対してわたしたちは当事者でもありませんから、積極的にヘルプしようとしません。
人間とは本能的に“対岸の火事”を眺めて自らの幸せを感じてしまう生き物だと思います。
この映画を観て日本は良い国だと感じた
わたしもそうです。日本ほど良い国はないと安堵感を持ちます。
確かに政治的な不信や給料が安い、物価が高いなどと不満はあるかもしれません。
でもわたしはこの日本が良いと思うのは「平和である」「安全である」「平等である」そして「自由である」です。
この4つが全て確率されている国はそんなにないと思います。
アメリカの銃とドラッグ社会は安全ですか?中国には自由はありますか?ヨーロッパの階級社会は差別ではないのか?
平和ボケ日本と警鐘を唱える人がいますが、ボケてしまうほど平和って素晴らしいではないですか。そんな良いことはないと思うのです。
若い純粋な少年ほど洗脳しやすいのだろう
話を映画に戻します。この映画が言いたかったことに民族、宗教問題から派生する憎しみの恐ろしさと根深さがあると思います。
一旦、心に埋め込まれた憎悪は中々取り除くことはできません。
少年テロリストを洗脳しているイスラム原理主義のリーダーはずっと電話越しで指示を出しています。
少年兵をコマのように操ります。このことからかなりのカリスマ性と持っており、少年たちを徹底的に洗脳したことが予想できます。
洗脳するためには彼らのいう他教徒への憎悪を増長させたのでしょう。こうなるともう戻れません。
わたしたちの国がいつまでも平和であることを祈る
テロリストの少年も犠牲者です。貧しくて教養もありません。
とても冷めた結論から申し上げると世界は今後ももっともっと混迷を深めると思います。
世界各地で憎悪が爆発して多くの犠牲者が溢れる気がします。
たった10年前の事件ですらわたしたちは忘れていまうぐらいいまや日常的にテロや紛争があります。
それに対してわたしたちは常に傍観者でいました。
でもひょっとしたらいつか当事者になってしまう可能性もあることだけは頭に入れておかないといけません。
自分の身は自分で守りたい、そう思った映画でした。
映画『ホテル・ムンバイ』まとめ 一言で言うと!
「平和ボケ」と笑われるなんて心底幸せだと思う
日本は本当に良い国だと思います。とても平和です。安全です。平等です。自由です。これだけは世界に誇れます。この平和な時代が続くのであれば。多少、生活が苦しくても構いません。
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映画『ホテル・ムンバ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
アンソニー・マラス
製作
ベイジル・イバニク ゲイリー・ハミルトン マイク・ガブラウィ ジュリー・ライアン アンドリュー・オギルビー ジョーモン・トーマス
製作総指揮
ケント・クベナ ジョナサン・ファーマン ライアン・ハミルトン イン・イェ マーク・モントゴメリー デブ・パテル ジョン・コリー ジョゼフ・N・コーエン ゲイリー・エリス
脚本
ジョン・コリー アンソニー・マラス
撮影
ニック・レミー・マシューズ
美術
スティーブン・ジョーンズ=エバンズ
衣装
アナ・ボーゲージ
編集
ピーター・マクナルティ アンソニー・マラス
音楽
フォルカー・ベルテルマン
音楽監修
ローラ・カッツ
アルジュン(デブ・パテル)
デヴィッド(アーミー・ハマー)
ザーラ(ナザニン・ボニアディ)
サリー(ティルダ・コブハム=ハーベイ)
オベロイ料理長(アヌパム・カー)
ワシリー(ジェイソン・アイザックス)
2018年製作/123分/R15+/オーストラリア・アメリカ・インド合作
原題:Hotel Mumbai
配給:ギャガ