『ほしのこえ』(25分/日本/2002)
英題『The voices of a distant star Voices of a Distant Star』
映画『ほしのこえ』のオススメ度は?
星5つ
間違いなく名作です。
大きなスクリーンで観ると感動は倍加します。
刹那的な物語です。
郷愁的な気持ちになります。
人に優しくなる自分に気がつきます。
友だち、恋人、子どもと観てください。
映画『ほしのこえ』の作品概要
2002年、日本のアニメ映画に革命が起きた。新海誠という新しい才能が現れた。新海作品を上映したのは短編映画専門の下北沢トリウッド。新海誠の才能をいち早く見抜いた大槻氏の功績は大きい。本作は新海誠がほとんど一人で作った映画。若き日の新海の情熱がほとばしる作品である。
映画『ほしのこえ』のあらすじ・ネタバレ
中学生のノボルとミカコは心を寄せ合っている。同じ高校に行くものと思っていたが、ミカコは国連宇宙軍に入隊して宇宙へ行くことになる。地球を守るために戦う。二人は地球と宇宙空間を通しての“遠距離”恋愛を始める。しかし、ミカコが遠ざかるたびに“時間”も遠ざかる。二人の恋の行方は、、、ミカコの命は、、、
映画『ほしのこえ』の感想・評価・内容・結末
アニメーション映画を一人で作ってしまった新海誠の驚異
本映画『ほしのこえ』は実質的に新海誠の劇場デビュー作と言っていい。本作が公開された瞬間、日本のアニメ史に新しいページが付け加えられることになったのは言うまでもない(そして日本のアニメ市場を席巻するのは新海誠になった)
それまで大手の製作プロダクション主流のアニメ制作だったのが、個人でもこれほどクオリティーの高いアニメ制作が可能になったと周知させたのだ。本作は新海誠がほぼ一人で作りきっている。いや“やりきっている”。
原画も脚本も演出も編集も、しかも声優までもやってのけている。とてつもないエネルギーだ。通常では考えられなかったことだ。だからアニメ作家を目指す若者に希望を与えたことが大きい。
映画の内容もとても良い。切ないのだ。わたしは2002年、実際にトリウッドで観ている(当時付き合っていた恋人に誘われて行った)正直、アニメ映画はあまり得意ではなかった。
でも『ほしのこえ』は25分という短い時間の中で新海誠の世界観の壮大さに驚愕した。もちろん物語も完結していて気持ちよかった。
そして何より、「泣いてしまった」のだ。どんな映画だったのか、と聞かれると「中学生の女の子が地球を代表して宇宙飛行士になって、地球侵略を企てる悪者とモデルスーツを着て戦う。彼女には地球にいる初恋の少年がいて、メールで連絡を取り合っているが、地球から離れるにつれメールの送受信が時間がかかる。二人は宇宙を超えて思いを募らせる。恋は実るのか」となる。
新海誠作品にはヒットの要因が内包されている
これが的を得ているかわからないけれど、大体こんな物語だったと捉えた。映画のヒットの法則として「一言で言える映画が良い」とある。
例えば『タイタニック』だったら「沈みゆく豪華客船の中で繰り広げられるロミオとジュリエットのような恋物語」『七人の侍』だったら「野武士の略奪に苦しむ農民に武士の生き様を投影し、無償の愛を捧げる七人の侍たち」となる。
先に書いたのは長いが、一言で本映画『ほしのこえ』を言うと「地球防衛のために命をかけて戦う女子中学生が宇宙空間から送るラブレターが切ない物語」となる。だからヒットする理由がわかる。
新海誠作品はSNSで拡散に向いている
と考えると新海誠は当時からSNSでの拡散を強く意識していたとしか思えない。特に日本のSNS市場で圧倒的なシェアを誇っているのはツイッターだ。
ツイッターは140字で表現するもの。漢字のある日本ではとても有利に情報を伝えられるのだ。“愛”は日本語で一文字、英語だと“love”で4文字になる。
よって短い表現で映画の内容を送るのにはツイッターが最良だ。
ロマン・ファンタジー・ノスタルジー感に溢れている
さて、『ほしのこえ』だが、もちろん実際には起きないだろう物語と笑う人もいるかもしれないが、それが映画表現なのだ。
ロマンもあるしファンタジーもあるし、そして新海誠作品には強いノスタルジーある。心に深く浸透してくる。どこか郷愁的なのだ。
「あんなところ行ったことある」とか「ああ、あんな風景見たことある」と言う共感から来るノスタルジーだ。
これが強く心に残るのだ。何気ない雨の踏切に語られるポエムのようなセリフも心を震わせる。こういった感覚を覚えるアニメ作品は今まで観たことがなかったから衝撃的だった。
聖地巡礼は自身のルーツを探しているのではないか
例えば香港の映画監督ウォン・カーウァイ『恋する惑星』などに見られた刹那的なエピローグを語る手法が一時流行ったが、新海誠は刹那的プラス郷愁的という、生き物が持つ帰巣本能を刺激した演出を新たに作り出したと言える。
実際、『ほしのこえ』以降の新海作品が舞台となった街に人々が聖地巡礼と言って訪れているのは正に郷愁的な“懐かしさ”と感じ、共感と共有を得たいのだろう。
そして巡礼をした人たちは即様SNSにアップするから新海誠ワールドは永遠に繰り返されることになる。宇宙的だよね。
『ほしのこえ』は新海誠監督が映画のみならず今あるこの“承認欲求”世界を見通して作った意図が確実に見受けられるのだ。2002年、トリウッドの隅っこ見かけた新海誠監督が目に浮かぶ、思い出すとノスタルジックな気持ちになる。
映画『ほしのこえ』まとめ 一言で言うと!
「今すぐ逢いたい、すぐ戻ってきて!」と叫びたくなる映画です。
感受性豊かな10代の恋ほど胸焦がれるものはないのかもしれない。二人の恋は星が燃え尽きていくゆっくりした時間で進んでいく。そして青白い光の向こうから互いの思いは“ほしのこえ”として受け取っていたのだろう
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https://undazeart.com/tenkinoko/
映画『ほしのこえ』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ 監督
新海誠
原案
新海誠
脚本
新海誠
制作
新海誠
製作プロデューサー
萩原嘉博
音楽
天門
主題歌
Low
声優監督
亀山俊樹
音響制作
岡部潔
録音
西村洋二 キャスト(声の出演)
武藤寿美(長峰美加子)
鈴木千尋(寺尾昇)
ドナ・バーク(リシテア艦オペレーター)
篠原美香(長峰美加子)(オリジナル版)
新海誠(寺尾昇)(オリジナル版)
作品データ 製作年
2002年
製作国
日本 配給 MANGAZOO.COM
上映時間 25分