『暁に祈れ』(117分/英仏合作/2017)

2019年製作
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映画『暁に祈れ』公式サイト|12月8日(土)全国ロードショー
地獄と呼ばれた刑務所をムエタイで生き抜け 魂を揺さぶる真実の物語

原題 『 A Prayer Before Dawn

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イギリスから来た青年が、タイでドラッグに溺れ沈没して刑務所にぶち込まれる。凶悪犯罪者の囲まれ、生き抜いていくための手段として用いたのは“拳”だった

最近、ドラッグや酒に溺れる映画が多いが、それらの恐ろしさを伝えてくれていると信じる。ドラッグは絶対にダメだ

 『暁に祈れ』を観た。コメントが難しい。予告が上手く出来ていた。何となく挫折を味わったボクサーが成り上がっていく物語なのかなあと思っていた。それもイギリス人青年が無実の罪でタイの刑務所にぶち込まれて、地獄から抜け出す成功物語と想像していた。でも実際観ると違った。昨年から『エリック・クラプトン~12小節の人生~』や『アリー/ スター誕生』『ボヘミアン・ラプソディ』と連続でドラッグと酒にまみれた映画が多く、アーチストだから仕方ないというような風潮に流されそうで違和感を持っていた。だからこの映画はスポーツをテーマにしているので、まさか麻薬に溺れる物語とは、、、とガッカリしてしまったのだ。

そうか、ドラッグをやるのは幸せになるためではなく、恐怖と重圧から逃げるためなのか

 おまけに結末が予想とは違う。ボクサーのビリーはタイで薬物まみれの生活を送り、刑務所にぶち込まれる。異国の刑務所は過酷だ。一番辛いのは孤独だろう。しかも凶悪犯罪を犯した受刑者の大部屋。喧嘩、脅迫、そしてレイプも横行している。そのような過酷な状況でビリーは何とか脱出しようと戦い抜く。途中までサクセスストーリーを予想していた。そして偉大なるチャンピオンになるのかなと思ったが、全く違った。刑務所の中でもヘロインが容易に手に入り、溺れていく。でも元はボクサー。何とかもう一度、グラブを持ち体を鍛えていく。そして他の刑務所との試合が組まれ、ビリーはプレッシャーに包まれる。勝たないと殺されるからだ。ここで不屈の闘志を見せて欲しかった。ビリーは逃げるようにヘロイン(ヤーバー)を吸う。それからは何度となくヘロインを吸引する映像が流れまくる。まるで麻薬を推奨しているような映画と感じてしまった。残念だ。

ビリーは試合で勝ったが、ドラッグには負けた。つまり何にも勝っていないのだ

 私は日本に暮らしている。日本はそれほど麻薬は身近ではない。いや全く私たちの生活に関係ないと言って良い。だからこそアーチストが麻薬漬けなりながら、名作を残すという展開に違和感を感じるのだ。ましてや格闘技をやる人間などはもってのほかだろう。

 映画は予想通り最後には勝利して終わる。お決まりのパターンだ。ビリーは試合で勝って、ドラッグにも勝ったのであるなら良い。エンディングに原作者のビリーが登場する。ビリーはタイの刑務所を出所し、イギリスへ帰り収監され、刑期を終えて出所したそうだ。そしてテロップに次のように出る。「ビリーは麻薬をやめる努力をしている」もうガッカリだ。

格闘家は美しい存在だ ドラッグでは肉体の強さも精神の強さも育まれない

 さて私は格闘技が好きだ。やるのではない見るのが好きだ。彼らは美しいからだ。自らの体を究極に鍛え上げ、命をかけて戦う。無論、お金のためでもあるが、やはり精神性を高める目的もあると思うのだ。彼らしか見えない超精神性の世界があると思うのだ。それをドラッグを使って怪我して欲しくないのだ。

 この映画を見たい人で、格闘シーンを見ようと思った人にとっては今ひとつだと思う。それほど迫力もなければ、リアリティーもない。

映画を観る理由は登場人物の成長物語に共感する事で自分に重ね合わせたいのだ

 イギリスから来たバックパッカー、もしくは世捨て人が、旅先で沈没して刑務所にぶち込まれボクシングをする際、ドラッグの力を借りて試合に勝つ。たったそれだけだ。特に人間の成長物語としてはうまく描かれていないと思う。ちょっと厳しいかもしれない。でも映画と言うのは人間の成長物語なのだ。そこに感動するのだ。この映画は最初からジャンキー、最後もジャンキーとなっている。つまり全く成長していないのだ。今年1本目の映画だっただけに期待していたが、ちょっと落胆してしまった。映画と言うのはなかなか難しいと思う。

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監督 ジャン=ステファーヌ・ソベール
製作 ニコラス・サイモン
   ロイ・ボウルター
   ソロン・パパドプーロス
   リタ・ダゲール
製作総指揮 ジェームズ・シェイマス
      ジェニファー・ドン
      ウッディ・ムー
      ピーター・ワトソン
原作    ビリー・ムーア
脚本    ジョナサン・ハーシュビーン
      ニック・ソルトリーズ
撮影 ダビド・ウンガロ
美術 レク・チャイヤン・チュンスティワット
衣装 ルプタ・ウタマ
編集 マルク・ブクロ
音楽 ニコラス・ベッカー

ジョー・コール       ビリー・ムーア
ポンチャノック・マブラン  フェイム
ビタヤ・パンスリンガム   フリーチャー所長
ソムラック・カムシン    スティン
パンヤ・イムアンパイ    ゲン

原題 A Prayer Before Dawn
製作年 2017年
製作国 イギリス・フランス合作
配給 トランスフォーマー
上映時間 117分
映倫区分 R15+

  

 

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