映画『リチャード・ジュエル』のあらすじ・ネタバレ・解説・感想・評価から作品概要・キャスト、予告編動画も紹介し、物語のラストまで簡単に解説しています。
映画『リチャード・ジュエル』公式サイトにて作品情報・キャスト・上映館・お時間もご確認ください。
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『リチャード・ジュエル』(131分/アメリカ/2019)
原題『Richard Jewell』
【監督】
クリント・イーストウッド
【製作】
クリント・イーストウッド ティム・ムーア ジェシカ・マイヤー
ケビン・ミッシャー レオナルド・ディカプリオ
ジェニファー・デイビソン ジョナ・ヒル
【出演】
ポール・ウォルター・ハウザー
サム・ロックウェル
キャシー・ベイツ
ジョン・ハム
オリビア・ワイルド
映画『リチャード・ジュエル』のオススメ度は?
星4つです
さすがクリント・イーストウッドです
20年前の話を現代に持ってきました
メディアと国家権力の暴力性
SNSの恐怖です
安易は発言はしないこと
映画『リチャード・ジュエル』の作品概要
『リチャード・ジュエル』原題『Richard Jewell』2019年のアメリカ合衆国の伝記ドラマ映画。監督はクリント・イーストウッド。主演はポール・ウォルター・ハウザーとサム・ロックウェル。アトランタ五輪の際、警備していた人物が爆破物を発見して多くの人命を救ったのに関わらず犯人扱いされた。メディアと国家の狂気を描いている。
映画『リチャード・ジュエル』のあらすじ・ネタバレ
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は法務執行官を目指す若者。特に警察官を夢見ている。太っちょの彼はいつもバカにされている。しかしたった一人だけ彼い優しく接する男がいる。後に彼の弁護士になるワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル) だ。数年後、リチャードはアトランタ五輪関連のイベントで警備を行う。その際、爆弾を発見し多くの人の命を救い英雄となった、しかし彼を快く思わない人の通報で自作自演の犯人にされていく。昨日までは英雄だったのに今では凶悪犯だ。プライバシーも侵害され誰も信頼できない。そしてかつて自分を認めてくれたワトソン・ブライアントに電話する。
映画『リチャード・ジュエル』の感想・評価・内容・結末
クリント・イーストウッド実話作品12本目
クリント・イーストウッド最新作『リチャード・ジュエル』はまたもや実話を元に製作されました。
クリントイーストウッド監督の実話作品は12本目になります。
かつては西部劇や刑事物などのドラマ作品を多く撮っていましたが、近年はずっと実話を元に映画を撮っています。
その傾向はより私たちに近い人間を撮り始めていると言ってもいいです。
前作は麻薬を運ぶ老人の話で『運び屋』。
その前の『15時17分、パリ行き』では列車内でテロリストを阻止した青年の話。
さらにその前は『ハドソン川の奇跡』でパイロットの話です。
徐々にわたしたちに近い人物を描くようになっています。
その真意はわかりませんが、市井の人たちの物語の中にこそ、人間らしさが垣間見えるからではないでしょうか。
いわゆる事実は小説よりきなりです。
20年前の話ではなく、いま起こり得る話である
この『リチャード・ジュエル』はとても今の時代に重要な作品であるとイーストウッドは言っています。
この事件が起きたのは今から20年も前です。
メディアは新聞、テレビ、ラジオの時代です。
この時代の狂気をテーマにしています。
敵はメディアだけではありません。
政府もです。
クリント・イーストウッドは弱き者存在の背景には権力を持った存在があるということを如実に訴えているのです。
いまでも、誰にでも起きる話です。
メディアという“イジメ”ほど恐ろしいものはない
当時はメディアと政府が一丸となってジュエリーを犯人と決めつけていきました。
確たる証拠もないのに逮捕へと着々と捜査を進めていきます。
メディアスクラムって知ってますか?
メディアがタッグを組んで連日連夜押しかけて、報道合戦を繰り広げるのです。
それを受ける側のストレスは半端ないでしょう。
完全にイジメの構図と同じです。
もう生活は破綻します。
自分の立場に置き換えたら耐えられないでしょう。
死んじゃいます。
リチャード・ジュエル自身も権力に憧れていた
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は確かに正義感が強いです。
そして自身は権力を持つ仕事への憧れを持っています。
法務執行者である警察官になりたいと切に願っています。
法律を守ることが人間で、自分はその人間たちをコントロールする側にありたいと思っています。
この狂気的なステレオタイプの正義感が裏目に出ます。
FBI捜査官の尋問に素直に答えるのです。
心の中に「法を守る者が違法な尋問などしない」という先入観があるのです。
ここは観ているとちょっとイラっとしました。
「しゃべるな」と声を上げてしまいました。
過去のプライバシーも暴かれていく
リチャードはアトランタオリンピックのセレモニーの警備をしていた時に爆弾を発見して、マニュアル通りに多くの人を避難させて、英雄となりました。
しかし過去においての逮捕歴や先に挙げたように行き過ぎた警備を行った事実が露呈され犯人に仕立て上げられていきます。
「自作自演だ」と掻き立てられます。
少なからずリチャードに恨みを持っていた人物がいたのです。
目立ちがり屋の白人、良い歳で母と暮らすマザコン、ゲイなどの情報が寄せられます。
そういったプライバシーも暴かれて人々の好奇の目に晒されていきます。
国民総出で一度英雄に祭り上げた男を叩き落とすのです。
もう異常です。
弁護士のワトソン・ブライアントの救済
そんな中、一途の光を当ててくれるのが弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)です。
かつては大手事務所で多忙な弁護士をしていましたが、独立しています。
仕事はあまりありません。
リチャードとは以前の事務所で唯一、リチャードに親切にした男です。
いつもバカにされていたリチャードが彼に弁護を依頼する理由がわかります。
兎にも角にも男気があります。
FBIの捜査の非合法性を説いてリチャードの汚名を晴らします。
女性記者の表現はもっと精査すべきだったのでは
ここでもう一人忘れてはいけない人物がいます。
女性記者キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド) です。
彼女の記者魂は素晴らしいといえば聞こえは良いのですが、スクープのためなら男と寝ることもいとわないのです。
気が強く自己顕示欲があり、上へ上へと登りつめることを目的としています。
「我こそが一番なり」という発想はアメリカ人らしいのですが、実際にこのような女性だったかについては賛否両論が巻き起こっています。
この女性記者の“枕営業”的な表現はもう少し精査する必要が会ったことは否めません。
松本サリン事件の河野さんを思い出した
もうひとつ。この映画を観ながら頭をよぎったのは松本サリン事件で容疑者にされた河野さんのことです。
サリンを散布した容疑者として厳しく尋問されました。
とても苦しい思いをしたことでしょう。
メディアの初動発表が全てだったと言われます。
確実な証拠を取らずスクープを取ることを目指した記者の記事によって拡散されました。
そして他の新聞、テレビが追随したのです。
一度、火がつくと激しくなるばかりで、火消しは容易ではありません。
リチャード・ジュエルの場合も同じでした。
クリント・イーストウッドの先見性とSNSへの危機感
でもメディアという世界は魔物が住んでいると言われています。
社会的なニュースをとればそれが世の中の役に立った事実が深く脳に記憶されるのです。
承認欲求が満たされて次も「スクープをとりたい」と思うのです。
わたしたちのSNS上での「いいね」と似ています。
クリント・イーストウッドは正に現代のSNSのことをテーマにこの映画を撮っているのです。
20年前のわたしたちはメディアを持っていません。
しかし今は誰でもスマホを通して世界に発信できる時代です。
それが正しいか否かを確認する作業は後回しです。
ここに危機感があるのです。
SNSを安易に使うと自らを破滅へと追い込む可能性があるのです。
間違ったニュースや完全にフェイクとわかるニュースが世界中に飛び交っています。
かつてのジュエルのような被害にあっている人は星の数ほどいるのかもしれません。
異常な情報社会に異議を唱えるクリント・イーストウッドはさすがだと感じました。
人の不幸ほど面白いものはない
人とは身勝手な生き物です。
他人の不幸をネタにして笑い者にする残酷性を持ち合わています。
テレビのワードショー番組を食い入るように見る様はそれを言い当てています。
しかもワイドショー番組は視聴率は高いのです。
自分の立場に置き換えて考えることを忘れます。
自分に火の粉が来ないように人の噂に励み、人を攻撃することで自らの身を守っているのです。
それはメッキとも言えるくらい弱いものなのです。
けれども自分自身の発言や行動がいつ何時、炎上するのかは予測できません。
たった一言で世界を敵にしてしまう可能性があるのです。
スマホ、パソコンは上手に使わないといけません。
危険な時代です。
思考が麻痺してしまう時代です。
映画『リチャード・ジュエル』のキャストについて
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)
太っちょで、マザコンで、法執行官に憧れる青年です。国家権力への忠誠心が強いです。ポール・ウォルター・ハウザーという役者はこの映画のために生まれてきたのではないだろうかと思わせるほど、実在のリチャードの似ています。彼の出演した映画をいくつか調べましたが、正直印象に残っていないのです。『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』も『ブラック・クランズマン 』も観てますが、失礼ながら覚えていないのです。でも本映画『リチャード・ジュエル』を観て、とても良い役者だと気付かされました。感情を爆発させるような演技はしません。体型が特徴です。ゆったりとした演技です。優しい人間というイメージが伝わってきました。
ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)
誰にも縛られず自由でいたい弁護士です。かつては弁護士事務所にいましたが独立しました。仕事は少ないです。型破りな弁護士でスーツなどは着ません。短パンにTシャツです。信じた顧客のために尽力します。この役をサム・ロックウェルが演じています。優しい風貌ですが、ちゃんと魅せてくれます。ロックウェルは『バイス』でジョージ・W・ブッシュ大統領を演じていましたか。あの役も実にバカっぽくて良かったです。本映画の弁護士はとても板についていました。最後まで「この弁護士は信じることができる唯一の人」と思わせてくれる演技でした。
ボビ・ジュエル(キャシー・ベイ)
愛する息子リチャードに注ぐ愛は尋常ではないです。ちょっと溺愛すぎる母親を演じています。本映画のベイツはとても優しい母親像を演じています。涙、涙の会見は必見です。『ビリーブ 未来への大逆転』では伝説の女弁護士を見事に演じています。
トム・ショウ(ジョン・ハム)
FBIの嫌な捜査官です。権力を武器にしています。見た目はとてもハンサムです。信頼感があります。思わず誘導されてしまいそうなほどです。しかし犯人を上げるためには違法すれすれの捜査を行います。これが実に恐ろしいのです。こんな人には会いたくないと感じました。
キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド)
スクープのためならベッドを共にするという記者です。口が悪いです。しかも自己顕示力が半端ないです。特にスクープを取った後、スタッフが拍手万雷の場面の嬉々とした表情には寒気がしました。オリビア・ワイルドの演技は素晴らしかったです。この人の今後を期待したいと思います。
まとめ 映画『リチャード・ジュエル』一言で言うと!
「なんて悲しい人生だったのか」
リチャードは性格的に少し偏っていましたが、そこに正義の心があったことは事実です。もう少し周囲の人が彼に良いアドバイスをしていれば、世のため人のために貢献できたのではないでしょうか。
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【クリント・イーストウッド監督・出演映画】
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映画『リチャード・ジュエル』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
クリント・イーストウッド
製作
クリント・イーストウッド ティム・ムーア ジェシカ・マイヤー ケビン・ミッシャー レオナルド・ディカプリオ ジェニファー・デイビソン ジョナ・ヒル
原案
マリー・ブレナー
脚本
ビリー・レイ
撮影
イブ・ベランジェ
美術
ケビン・イシオカ
衣装
デボラ・ホッパー
編集
ジョエル・コックス
音楽
アルトゥロ・サンドバル
リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)
ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)
ボビ・ジュエル(キャシー・ベイツ)
トム・ショウ(ジョン・ハム)
キャシー・スクラッグス(オリビア・ワイルド)
ナディア・ライト(ニナ・アリアンダ)
ダン・ベネット(イアン・ゴメス)
2019年製作/131分/アメリカ
原題:Richard Jewell
配給:ワーナー・ブラザース映画