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『ラスト・ムービースター』(103分/アメリカ/2017)
原題『The Last Movie Star』
監督
アダム・リフキン
出演
バート・レイノルズ
アリエル・ウィンター
クラーク・デューク
映画『ラスト・ムービースター』のオススメ度は?
星4つです。
かつては西部劇の大スターだった男が過去と向き合います。
両親、兄と過ごした生家を訪ねたり、、、
最初の妻にプロポースした橋に行ったり、、、
更にアルツハイマーになった妻に再度プロポーズしたり、、、
郷愁的な気持ちになります。
でもレイノルズに悲観的な表情がないのですよ。
だからとっても明るくて笑える映画になっています。
映画『ラスト・ムービースター』の作品概要
アメリカ映画史に間違いなく燦然と輝く大スター、バート・レイノルズを主演に製作されました。奇しくもレイノルズにとって最後の主演作品になりました。レイノルズが映画の出演に求めたのはアクションとユーモアだそうです。本作は人生終盤の思い出探しでありながらそれほど郷愁的にならないのはレイノルズの演技の賜物だと言えます。
映画『ラスト・ムービースター』のあらすじ・ネタバレ
かつては西部劇の大スターだったヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ) は長年共に暮らした犬にも去られ、今や大豪邸で一人余生を過ごしている。ある日、テキサスのナッシュビルから映画祭招待のハガキが届く。当初は行かないつもりだったが俳優仲間に勧めらて行くことに。しかし現地に着くと名ばかりの映画祭でただの映画オタクの集まりだった。憤慨したヴィックは運転手のリルと町を出てかつての生家へ向かう。年も価値観も違う二人が旅をしながら何を得るのだろうか、、、。
映画『ラスト・ムービースター』の感想・評価・内容・結末
本年度、ハリウッドの黄金期を飾った映画スターの作品が3つ公開されました。クリント・イーストウッドの『運び屋』ロバート・レッドフォードの『さらば愛しきアウトロー』そして本作のバート・レイノルズです。どの俳優に共通しているのはハンサムであること、そしてアクションも進んで行うこと、さらに私生活においても多くの話題を提供したことです。ただレイノルズは監督業としてはイーストウッドとレッドフォードに遠く及びません。ヒット作がないのです。できることなら生涯俳優ひとすじを貫けば良かったと思います。
また奇しくもイーストウッドとレイノルズは1984年『シティーヒート』で共演しています。二人はほぼ同世代の大スターです。この時はレイノルズの方がアメリカでは人気があったのではないでしょうか。映画の中では二人は「喧嘩するほど仲が良い」的なコンビをやっています。その後ですが、イーストウッドは監督として大成していきますが、レイノルズは徐々に仕事がなくなっていきます。私生活でのトラブルも重なります。話は脱線しますが、イーストウッドと共演後に落ち目になった俳優でケビン・コスナー『パーフェクト・ワールド』とジェフ・ブリッジス『サンダーボルト』が真っ先に挙げられます。イーストウッドは結構潰し屋として有名なんです。
さて、映画はレイノルズの実生活をモチーフにちゃんとしたドラマとして描いています。かつては西部劇で一世風靡した大スター、ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)
は今や仕事もなく、日々豪邸で一人で暮らしています。長年共に過ごした愛犬も死んでしまいました。かつての俳優仲間と町のカフェで若い女性のお尻を見ながらコーヒーを飲むのが楽しみな人生です。そんな時にテキサスのナッシュビルという町の映画祭から招待状が届きます。友人の俳優に相談すると「クリント・イーストウッドやジャック・ニコルソン、ロバート・デ・ニーロも行っているから行ってこい」と言われ現地へ飛びます。しかしその映画祭は地元の映画マニアが勝手に作ったインチキまがいの映画祭でスターである自分に失礼だと憤慨します。映画祭主催者を大ゲンカしてしまいます。
でも、でもです。ヴィックの付き人兼運転手のリル(アリエル・ウィンター) に何となく心を開いてかつての生家や最初の妻との思い出の場所巡りのロードムービーが始まります。
映画は一言でいうと年老いた人が人生に終盤になって過去を振り返り悔恨と郷愁の念に暮れる、そして謝罪で清算して新しい人生を歩む、というものです。実はわたしはこういった郷愁的な映画は好きではないのです。『ニューシネマパラダイス』も良い映画ですが、あまりにも過去を振り返りすぎるので今では好きではありません(でも初期の劇場版は好きです)その他、『黄昏』も観ていて胸が苦しくなってしまうのです。たぶんですが、わたし自身まだ老いを認めたくないからでしょうが、こういった過去を振り返る映画は苦手なのです。
でも本作は割と楽しく観ることができました。まずレイノルズ演じるヴィック・エドワーズがカッコイイのが良いです。過去の栄光にこだわっていますが、誰かに「俺は偉大なスターだった」などの自慢や「俺は落ちぶれてしまった」などの同情を求めないところです。人はいくつになっても自分自慢をしたがります。ましては年をとればクドくらいに自慢を繰り返すそうです。更に自身のダメ具合を口にするのは欠点を晒せば、攻撃されず同情されるという利点を知っているからです。ちょっとズルいですよね。それが本作にはないんですよね。だから気持ち良く観ることができました。
ヴィックは自身が生まれた家を訪ねて両親や兄への感謝の気持ちを語ります。そして大学生の時のアメフト時代を回想して「アメフトの選手の方が映画スターよりずっとステイタスが高い」と言います。そして最大の見せ場は最初の妻を訪問するところです。今はアルツハイマーになってボケてしまっている妻を連れ出し、思い出の橋でプロポーズします。この演出にはちょっと恥ずかしくなってしまいますが、まあ良しとしましょう。
ここでリルの心情光景の変化が映画において良い味を添えてきます。当初からヴィックを「このクソ爺」扱いをしていましたが、一緒にいることで少しずつ尊敬の念を抱き始めるのです。この映画の最大の見せ場はここではないでしょうか。リルのキャラクターがとにかくめちゃくちゃです。遅刻するわ、運転は乱暴だわ、言葉使いも悪いわで、、、。でも可愛い一面も随所に出しています。
ヴィックはリルとの小さな旅が終わり映画祭に再び帰ってきます。そしてこの映画祭のおかげで自身が初めて自分の過去と向き合えて良かった感謝の意を表します。ここはもうアメリカ映画らしい演出です。しかし、わたしはやっぱりレイノルズの何気ない演技が抜群に感じてしまいました。本当に杖を用いての生活かわかりませんが、ヨボヨボな老体に鞭打って、苦しいはずなのにそれほど心配をさせません。それがまたカッコイイのです。レイノルズは昨年死んでしまいましたが、かつても作品を今一度観たい気持ちになりました。
*演出として過去のレイノルズ出演作品『トランザム7000』や『キャノンボール』と現在のレイノルズの合成がありますが、それは良いエッセンスになっていると思います。過去の自分に向かって説法する様ばかりですが、できれば美女とのシーンも入れて欲しかったです。やっぱりセクシー俳優の第一人者ですから。
映画『ラスト・ムービースター』まとめ 一言で言うと!
「ここへ戻ってくるな!郷愁に浸るな!それはお前をダメにする」
これは確か『ニュー・シネマ・パラダイス』のサルヴァトーレがトトをローマに送り出す時に言った言葉です。とても感銘を受けた言葉です。でもある程度、人生の終盤であるなら故郷へ帰っても良い気がした映画でした。
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映画『ラスト・ムービースター』の作品情報
映画.comより一部引用
スタッフ・キャスト
監督
アダム・リフキン
製作
ニール・マント ゴードン・ホワイトナー アダム・リフキン ブライアン・キャバレロ
製作総指揮
ブレット・トマソン エリク・クリッツァー
脚本
アダム・リフキン
撮影
スコット・ウィニグ
美術
ブレット・A・スノッドグラス
編集
ダン・フレッシャー
音楽
オースティン・ウィントリー
ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)
リル(アリエル・ウィンター)
クラーク・デューク
エラー・コルトレーン
ニッキー・ブロンスキー
チェビー・チェイス
2017年製作/103分/アメリカ
原題:The Last Movie Star
配給:ブロードウェイ