実話映画『運び屋』ネタバレ・あらすじ「クリント・イーストウッドの仕事人間」感想「麻薬を運ぶ老人」評価「老いがテーマではない」

実話映画『運び屋』ネタバレ・あらすじ「クリント・イーストウッドの仕事人間」感想「麻薬を運ぶ老人」評価「老いがテーマではない」 2019年製作
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実話映画『運び屋』ネタバレ・あらすじ「クリント・イーストウッドの仕事人間」感想「麻薬を運ぶ老人」評価「老いがテーマではない」

映画『運び屋』IMDbサイトにて作品情報・キャスト情報をご確認ください。
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クリント・イーストウッド監督・主演最新作『運び屋』公式サイト 大ヒット上映中!
クリント・イーストウッド監督・主演最新作『運び屋』公式サイト 6.19ブルーレイ&DVDリリース 5.15【先行】デジタル配信 hakobiyamovie.jp #運び屋

『運び屋』
(116分/米/2018)
原題『The Mule』
配給:ワーナー・ブラザース映画

【監督】クリント・イーストウッド
【製作】クリント・イーストウッド
ティム・ムーア クリスティーナ・リベラ ジェシカ・マイヤー ダン・フリードキン ブラッドリー・トーマス【製作総指揮】アーロン・L・ギルバート【原案】サム・ドルニック【脚本】ニック・シェンク【撮影】イブ・ベランジェ【美術】ケビン・イシオカ【衣装】デボラ・ホッパー【編集】ジョエル・コックス【音楽】アルトゥロ・サンドバル
【出演】
クリント・イーストウッド
ブラッドリー・クーパー ローレンス・フィッシュバーン マイケル・ペーニャ ダイアン・ウィースト アンディ・ガルシア イグナシオ・セリッチオ アリソン・イーストウッド タイッサ・ファーミガ ユージン・コルデロ ローレン・ディーン グラント・ロバーツ
ピート・バリス ロバート・ラサード ソウル・ウエソ リー・コック ノエル・G クリフトン・コリンズ・Jr. ダニエル・モンカダ ポール・リンカーン・アラヨ

【HPサイト】
映画『運び屋』IMDbサイト
【予告映像】
映画『運び屋』トレーラー

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  1. 映画『運び屋』NHK BSプレミアム放送 2021年9月6日(月)午後1時00分〜2時57分
    1. 9月6日(月)午後1時00分〜2時57分
  2. 映画『運び屋』のオススメ度は?
  3. 映画『運び屋』の作品情報・概要
  4. 映画『運び屋』のあらすじ・ネタバレ
  5. 『運び屋』を演じるイーストウッドは自らの映画人生を運んでいるように見えた。
    1. 仕事のためなら娘の結婚式などどうでも良い人間
    2. デイリリーを育てたら右に出る者はいない名人
    3. アナログからデジタルへの変革期に乗れなかった
    4. 麻薬を運ぶ仕事と妻の命、どっちが大切か
    5. イーストウッドの実の娘アリソンとのやりとりは涙もの。『黄昏』を彷彿させる。
    6. クリント・イーストウッドからブラッドリー・クーパーへ映画の伝承が行われる
    7. 自身の罪を認めること。それはアメリカ人すべてに伝えたかったことがあるのだろう。
    8. そしてアールは刑務所で大好きなデイリリーの栽培に励みながら人生を終わる。
  6. クリント・イーストウッドはアメリカの歴史を映画で撮っている。移民、麻薬、不正。親子の絆と愛。
    1. これがイーストウッドの遺作になる可能性もある。最後の主演作になるのか。
    2. ダーティーハリーの汚れ役で表現したかったことは何かわかって欲しい
    3. 開拓時代のアメリカはイーストウッドの西部劇そのもの。勝った者が正義なのだ。
    4. 『許されざる者』は究極の悪党主眼の映画だ。それだけにメッセージが強い名作だ。
    5. 『ミスティック・リバー』は“9.11”の報復とアフガン侵攻への是非を提言している。
    6. 『ミリオンダラー・ベイビー』はイラクのフセインに対して。でもそこに正義はあったのか。
    7. 『運び屋』は年取ったアメリカの現在の姿をクリント・イーストウッドは演じている。
  7. 『運び屋』はアメリカン・ドリームを体現した男の飽くなき挑戦の物語である
    1.  映画『運び屋』は映画史に燦然と残るだろう
    2. アールは老いについて一切の悩みがない。仕事への復活と情熱を持つ人間だ
    3. 失敗することの言い訳を先に考えては前へ進めない
    4. たかが一般人が何をやっても大した迷惑はかからない
    5. 人生は挑戦の繰り返しである。そして人生はまだまだ続くのだ
    6. クリント・イーストウッドの声が聞こえる「諦めるな、挑戦しろ」
  8. イーストウッドの映画作家としての才能に身震いしてしまう
    1. 逃れられない“老い”との対話
    2. クリント・イーストウッドの運転と歌う作品として一番良い
    3. こんなに自由気ままに歌うクリント・イーストウッドは久しぶりだ
    4. ジャズの精通したクリント・イーストウッドの映画は音楽も素晴らしい
    5. まだまだ現役!と宣言しているのは『運び屋』だ。
    6. クリント・イーストウッドの私生活もまたエネルギーがある。
    7. ブラッドリークーパーとクリント・イーストウッドの共演は名場面だ
    8. 実際のレオ・シャープは仕事を全うしただけだ。
    9. クリント・イーストウッドの次作を期待している。まだまだ続くだろう。
  9. 『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング

映画『運び屋』NHK BSプレミアム放送 2021年9月6日(月)午後1時00分〜2時57分

9月6日(月)午後1時00分〜2時57分

クリント・イーストウッド健在を世界に示しています。

まだまだ現役です。演じる役柄は90歳近い老人です。彼もまた生涯「現役」にこだわった男と言えます。

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映画『運び屋』のオススメ度は?

星4つ半です

必見です!

人生とは?

仕事とは?

生きることとは?

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映画『運び屋』の作品情報・概要

『運び屋』原題『The Mule』2018年のアメリカ合衆国の犯罪映画。クリント・イーストウッド監督・主演作品。原案は『ニューヨーク・タイムズ』のサム・ドルニックの記事「The Sinaloa Cartel’s 90-Year-Old Drug Mule」を映画化。80歳代でシナロア・カルテルの麻薬の運び屋となった第二次世界大戦の退役軍人であるレオ・シャープの実話をニック・シェンクが脚本を執筆した。イーストウッドが自ら主演するのは2012年の『人生の特等席』以来であり、監督作品での出演は2008年の『グラン・トリノ』以来となる。ブラッドリー・クーパー ローレンス・フィッシュバーン マイケル・ペーニャ ダイアン・ウィースト アンディ・ガルシア イグナシオ・セリッチオ アリソン・イーストウッド タイッサ・ファーミガ ユージン・コルデロ ローレン・ディーン グラント・ロバーツ ピート・バリス ロバート・ラサード ソウル・ウエソ リー・コック ノエル・G クリフトン・コリンズ・Jr. ダニエル・モンカダ ポール・リンカーン・アラヨが共演した。

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映画『運び屋』のあらすじ・ネタバレ

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『運び屋』を演じるイーストウッドは自らの映画人生を運んでいるように見えた。

 さて、前回はちょっとセンチメンタルになってしまってあまり良い原稿を書けなかった気がする。私はこの『運び屋』が上映中は週に一回は観に行くつもりでいる。クリント・イーストウッド作品を好きなのはもちろんのこと、私は映画館が好きなのだ。

仕事のためなら娘の結婚式などどうでも良い人間

 この作品でイーストウッドは自らの映画人生を重ねているように見える。まずイーストウッド演じるアールは仕事人間。家族のことよりとにかく仕事に人生をかけている。自身の娘の結婚式にも出ない。娘にとってチャペルを父親と歩くことは旅立ちの感謝を伝えるための大事な儀式だ。それすらもすっぽかす。そのせいで娘とは絶縁で12年も口をきいていない。

デイリリーを育てたら右に出る者はいない名人

 アールの仕事は花の栽培。特にデイリリーという百合を育てたら右に出ないほどの名人だ。全米各地で行われる品評会で数々の賞を獲得する有名人だ。娘の結婚式より品評会を選んでしまうほどデイリリーに命をかけている。しかも性格が気難しいと来た。昔気質んお頑固者。朝鮮戦争で戦った兵士でもある。誰かの指図も受けたくないし、昔ながらの方法で商売を成功へを導いてきた。

アナログからデジタルへの変革期に乗れなかった

 しかし、アールは時代の波に乗れなかったどころか、新しいビジネス展開を誤って倒産してしまった。アナログ気質はネット時代のデジタルな感性を認めなかったのだ。それまでメキシコ人を雇っていたが、一気に家も仕事場も失う。そこに現れたのはメキシコ系のマフィアだ。アールが数十年間、無事故無違反の優良ドライバーに目をつけて麻薬を運ばせるのだ。

 アールはそれが何なのかわかっていたと思う。報酬があまりにも高額だからだ。罪悪感を覚えながらもアールは仕事を請け負う。それはもう一度、花を育てたいという思いもあるが、もう一度家族と一緒に暮らしたいという思いが強くなっていく。90歳近い爺さんだが、しっかりと仕事をやり抜ける。例え汚い仕事でも約束したことは守り抜くという気位は失っていない。

麻薬を運ぶ仕事と妻の命、どっちが大切か

 しかし大量の麻薬を運ぶ途中に別居した妻の危篤の知らせを聞く。以前のアールなら仕事を優先し見舞いなど行かないが、アールは急いで妻の元へ駆けつける。娘も喜び12年ぶりに口をきく。妻との語らいが胸にくる「あなたほど憎らしい人はいない、あなたのことをずっと愛してる」妻は息を引き取る。そして娘と悲しみを共にする。

イーストウッドの実の娘アリソンとのやりとりは涙もの。『黄昏』を彷彿させる。

 この娘役のアイリスはイーストウッドの実の娘のアリソン・イーストウッドだ。結婚、離婚と数々の浮名を流してきたイーストウッドにとって「家族をないがしろにしてきた」という台詞の重さも感じる。何となくこの親娘のやりとりに『黄昏』のヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダを思い出してしまった。

クリント・イーストウッドからブラッドリー・クーパーへ映画の伝承が行われる

 さて、妻を看取った後、アールは最後の仕事に向かう。しかしブラッドリー・クーパー率いる麻薬捜査官に逮捕される。この場面も秀逸だ。クーパーはイーストウッドの後継者になる映画人だ。『アメリカン・スナイパー』でも演技もさることながら『アリー/スター誕生』では製作、監督、主演、脚本、音楽をこなす多才ぶりを発揮している。

自身の罪を認めること。それはアメリカ人すべてに伝えたかったことがあるのだろう。

 二人が対峙して交わす場面はおそらく数年後、映画の伝承場面として評価されるだろう。アールは逮捕され裁判にかけられる。年齢が年齢だけに裁判では無罪を主張する弁護士を遮ってアールは自ら「私は有罪です」と主張し刑務所へ入る。ここの場面が何とも侘しくなる。みんながいるのだ。アリソンもクーパーもその他この映画に登場する人々が。まるでイーストウッドに別れを告げているような雰囲気だ。結構グッと来るのだ。

そしてアールは刑務所で大好きなデイリリーの栽培に励みながら人生を終わる。

こんな映画だ。人生とは何だったのか。生きるとは何なのか。そしてどこへ行くのか。そんなことを考えさせる映画だ。

*余談であるがアンディ・ガルシアの風貌は本当にマフィアみたいだ。『ゴッドファーザー』のイケメンからこんなに変わるとはびっくりだ。恰幅もよくなった。

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クリント・イーストウッドはアメリカの歴史を映画で撮っている。移民、麻薬、不正。親子の絆と愛。

これがイーストウッドの遺作になる可能性もある。最後の主演作になるのか。

クリント・イーストウッド主演・監督の『運び屋』を観終わった。何と表現して良いのだろう。映画はもちろん良かった。でも何だかやりきれない気持ちがあるのだ。何だろう?そのやりきれない気持ちは淋しいというものだ。つまりひょっとしたらこれでクリント・イーストウッドの姿をスクリーンで観るのが最後になるのかもしれない、そしてイーストウッドの遺作になってしまうのではないかと変な胸騒ぎがするのだ(それだけ私は彼が好きなのだ)単なるファンではない、マニアでもない。映画人として尊敬しているのだ。彼が映画に捧げた人生はもう60年になる。70年代から第一線で活躍している。浮き沈みのあるこの世界で常に良作を発表していること自体が信じられない。

ダーティーハリーの汚れ役で表現したかったことは何かわかって欲しい

イーストウッドのことをあまり好きではない人に聞くと、多くは『ダーティーハリー』が嫌いだと答える。あの傍若無人で乱暴な姿がこの日本人には受け入れられないのかもしれない。日本ではアメリカのように拳銃を撃ち合うような事件は滅多に起こらない。しかもハリーには人情が無いように見えるから尚更かもしれない。

開拓時代のアメリカはイーストウッドの西部劇そのもの。勝った者が正義なのだ。

でもだ。イーストウッド作品を何本か観ていくとわかってくることが非常に多い。一言で言ってしまおう。イーストウッドはアメリカの歴史を描いていたのだ。アメリカそのものなのだ。例えば初期の西部劇作品。ドル箱三部作『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン『続・夕陽のガンマン』は監督はしていないが、演じる役に正義はない。自身の監督作品『荒野のストレンジャー』にも正義はない。『アウトロー』は若干正義がある。この正義がない作品は『許されざる者』再び観られる。何が言いたいかと言うと、アメリカは開拓の歴史がある。ヨーロッパから移住してきた人たちは銃と馬を持って広いアメリカ大陸を縦横無尽を駆け巡った。いつも死と隣合わせだ。つまり“勝つか負けるか”の繰り返しである。負けることは死ぬことだから、相手を殺して勝つしかないのだ。そこには正義がなかったことの方が多い。つまりイーストウッド作品の西部劇はアメリカ初期の姿を描いているのだ。正に歴史をなぞっているのだ。そして『ダーティーハリー』シリーズへ行く。これはどうだろう。ベトナム戦争でアメリカは疲弊している。若者の叫びが聞こえる。凶悪犯罪、猟奇的犯罪も増えてきた。犯罪者に人権が与えられ殺人を犯しても無罪になるケースが出て国民にはフラストレーションが溜まっていた。そこにハリーが現れたのだ。これも当時のアメリカ社会を反映している。

『許されざる者』は究極の悪党主眼の映画だ。それだけにメッセージが強い名作だ。

そして更に更に90年代に名作が生まれる。先にも上げたが『許されざる者』だ。こちらも正義はない。全くない。娼婦たちを哀れんで牧童を殺しに行くのではない。金が欲しいだけだ。娼婦は善か?いや殺人を依頼することで善ではない。保安官はどうか?全く悪党だ。暴力で街や人を抑え込む独裁者だ。その他、登場する人物のほとんだが善人とは言えない。これこそが名作たる所以なのだ。この作品が発表されたアメリカを思い出して欲しい。“湾岸戦争”があった。クウェートに侵攻したイラクをアメリカ主導の多国籍軍で徹底的に爆破した。これは正義だろうか?いや違うだろう。『許されざる者』は当時のアメリカに対して「こんなことして許されないだろう」と言うメッセージを送っている。実際、アメリカを憎むイスラム原理主義が台頭して世界は恐怖におののくのだ。イーストウッドはここでもアメリカの行方と湾岸戦争勝利の美酒に酔う国民に対して危機感を訴えているのだ。

『ミスティック・リバー』は“9.11”の報復とアフガン侵攻への是非を提言している。

更に『ミスティック・リバー』。これは間違いなくアフガン侵攻に対する反戦映画だと言える。その前年に“9.11”があった。まずはあの空撮。ボストン上空を低空で飛んでいく場面は貿易センタービルへ突っ込む飛行機をなぞらえて、アフガンを空爆する戦闘機を彷彿させる。このような演出で復讐と反戦を訴えるとは流石だと言える。もちろん物語も猟奇的であるが、事実確認が不明確なまま友人を殺害してしまう辺りがアフガニスタンに潜伏しているビンラディンに重なる。でもやってしまえばそれはもう戻れないから正義に置き換えるしかない。作られた正当性だ。

『ミリオンダラー・ベイビー』はイラクのフセインに対して。でもそこに正義はあったのか。

そして『ミリオンダラー・ベイビー』これほど悲しい物語はない。努力して栄光の座を掴んだのに後ろから不意打ちで未来を絶たれる。全てが終わる。この作品は“イラク戦争”について描いている。大量破壊兵器がイラク政府が持っていると称してイラクを攻撃した。結局イラクは持っていなかった。「勝つためには何でもして良いのか」あるいは「勝てば官軍」なのかと言う声が去来する。しかも汚い手段でやっつけるとは如何なものかである。

『運び屋』は年取ったアメリカの現在の姿をクリント・イーストウッドは演じている。

そして『運び屋』。本作のイーストウッドは正直言って“ヨボヨボ、ガリガリ、シワシワ”である。随分と年をとった。そしてもうすぐ死んでしまいそうな雰囲気だ。最後にイーストウッド演じるアールは刑務所で好きなデイリリーを育てている。この場面で私は深いため息をついてしまったのだ。「これはつまりイーストウッドはアメリカも随分と疲れ切ってしまっている。もう老人の国だ。自らの罪を認めて死を迎えよう」とでも言っているようだ。何とも意味深い。

このように考察するクリント・イーストウッドの偉大さが見えてくるのだ。彼は正に映画を通してアメリカの歴史から、アメリカに生まれた者の宿命とされた生き様を描いているのだ。クリント・イーストウッド作品を観ればアメリカ社会から世界が見えてくるのだ。

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『運び屋』はアメリカン・ドリームを体現した男の飽くなき挑戦の物語である

 映画『運び屋』は映画史に燦然と残るだろう

クリント・イーストウッドの『運び屋』が公開されたのは3月8日。今日は4月28日。合計4回劇場へ足を運んだ。

おそらく今回で最後になると思う。もうロングランは期待できない。残念であるが、日本ではこの手の映画の大ヒットは見込めないのが現実だ。

もちろん名作中の名作で映画史に燦然と残るだろう。

1回目観た時は何だかこれがクリント・イーストウッドの最後の作品なのではとちょっとセンチな気持ちになったが、ネットに流れるインタビューを見てるとまだまだ現役を続けると語っていたので嬉しくなった。だから2回目、3回目は十二分に楽しめた。

アールは老いについて一切の悩みがない。仕事への復活と情熱を持つ人間だ

この映画のレビューを読むとテーマは老いと書いてある記事が多い。でも私は違うと思う。主人公アールは確かに高齢であるが、まだまだ仕事をしたいという情熱を持っている。

もちろん自分が人生を捧げた園芸の仕事への復活を目指している。老いがテーマの映画の多くは迫り来るに恐怖したり、あるいはどうやって迎えるかを悩む物語が多い。

でもこのアールには一切そう行った感傷的な要素を感じないのだ。但し妻の死の場面に置いて人生について少し語っている。

それともう一つ、エンドクレジットに流れる音楽で「老いを迎え入れるな。生まれた日など忘れた。年齢など関係ない」と歌っている。

失敗することの言い訳を先に考えては前へ進めない

クリント・イーストウッド自身も年齢など只の数字に過ぎないと言っている。

情熱がなくなった瞬間に人間は老いていくのだと思う。

もっと言うなら何歳になっても人生いくらでもやり直せるのだ。人間は失敗したことを引きずり、なかなか次の一歩が出ない。

「また誰かに迷惑をかけるかもしれない」とか「どうせ、上手くいくはずがない」などと最初から言い訳を作ってしまうのだ(はっきり言うと良い訳を作ることで周りの人に良い人アピールしているとも言える)

そしてこのネガティブが感情こそが、まだまだ出る杭を自ら抑え込んでしまっているどころか、蟻地獄に陥れていることさえ気がつかなくなる。

こうなったらなかなか立ち直れない。蟻地獄の砂の壁にしがみ付き、音を立てずに過ごす弱き存在になる。

たかが一般人が何をやっても大した迷惑はかからない

たかが一度の人生だ、生まれた限り何でも挑戦することが大切だと思う。失敗しても大して迷惑などかからないのだ。

重大な犯罪はいけない。殺人、放火、強姦といった凶悪犯罪を犯すのは論外だ。

でもそんな人はあまりいないだろう。

例えば歴史上、偉人だと言われている人たちのことを調べると大概はその当時は『大迷惑』な存在だった言える。

秦の始皇帝も織田信長もナポレオンも、レーニンもとんでもない迷惑をかけている。それは多くの人の命を犠牲にしている場合が多い。

でも今となっては英雄だ。我々はこのような歴史上の偉人にはなれないしならない。彼らの迷惑と比べたら我々がやる迷惑など大したことないと思うのだ。

やりたいことをやるだけだ。それは大して迷惑をかけないし、失敗してもやり直しは効くのだ。

人生は挑戦の繰り返しである。そして人生はまだまだ続くのだ

本作のアールは確かに麻薬を運んだという罪を犯した。

でも彼は老いとは関係なく仕事をしたかったのだ。やりたいことをやったまでだ。

自分の存在価値を今一度確認するために『運び屋』をやったのだ。老いのことなど全く忘れていたはずだ。

あの年齢であの精力的な生き方を見れば一目瞭然である。彼は挑戦したのだ。自分の人生は絶えず挑戦の繰り返しだったのだ。

年齢など関係ないと書いたが、あの風貌でまだ挑戦する姿勢には感服させられる。見習いたい。

クリント・イーストウッドの声が聞こえる「諦めるな、挑戦しろ」

故にこの映画でクリント・イーストウッドの言いたかったのは老いではなく諦めるな、挑戦しろということではないだろうか。

挑戦は英語でチャレンジ、つまりアメリカン・ドリームで育ったイーストウッドらしいメッセージだと言える。

アメリカは確かにタフな国であるが、挑戦する者、努力する者を評価してくれる寛大さがある。

そういう土壌で育ったアールがこの運び屋を請け負った意味を考えるとアメリカの懐の深さが見えてくる映画であった。

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イーストウッドの映画作家としての才能に身震いしてしまう

逃れられない“老い”との対話

この映画は上映期間中、あと数回は観るだろう。観れば観るほどほど面白い。そしてイーストウッドの映画作家としての才能に身震いしてしまう。実に深い作品だ。この映画を観ながら自身の人生と照らし合わせる人も多いのではないだろうか。それは逃れられない老いとの対話でもある。しかし本作のアールは老いについて一切悩んでいない。強い人間か、それとも鈍感な人間なのかはあなたが各々が決めれば良い。

クリント・イーストウッドの運転と歌う作品として一番良い

イーストウッドが映画の中で車を運転する作品はたくさんある。『サンダーボルト』ブロンコ・ビリー』『センチメンタルアドベンチャー』そして『ダーティーハリー』などその他たくさんあるが、まず本作『運び屋』と共通するのは『サンダーボルト』『センチメンタルアドベンチャー』になる。前者は犯罪者、後者は音楽にだ。『ブロンコ・ビリー』はこの二本と同様、ロードムービー作品であるのが一致する。『ダーティーハリー』は街中を走るのでむしろ対局と言える。

こんなに自由気ままに歌うクリント・イーストウッドは久しぶりだ

特に本作では自由気ままに歌うイーストウッドを久々観て何となく哀愁を感じた。年老いた役ではあるが、やはり歌は過去の人生を想像させるものだ(イーストウッドの歌う姿に私自身も過去への思いを馳せてしまった)そりゃ、長い車での旅だ。走行中、歌も歌いたいさ。しかもアメリカは広いし、ラジオ局もたくさんある。州をまたげばいつも新しい音楽に出会える楽しみもある。クリント・イーストウッドの映画は音楽がとても大切なのだ。

ジャズの精通したクリント・イーストウッドの映画は音楽も素晴らしい

監督デビュー作の『恐怖のメロディー』の選曲のミスティーが実に良かった。以後の作品もジャズの精通する彼ならではの作りになっている。ただ目立たずそっと映像に寄り添うように弾かれているのがいい。『許されざる者』などは最たる例だ。さらに息子のカイルが『硫黄島からの手紙』『グラン・トリノ』『インビクタス/負けざる者たち』でイーストウッド作品の音楽を担当しているのが何だか嬉しく感じる。

まだまだ現役!と宣言しているのは『運び屋』だ。

そしてイーストウッドの願望なのか、それとも現役をアピールしているのかわからないが、道中、女性とベットを共にする場面がある。それだけではない、メキシコに招待された際も二人の女性と遊ぶ。これが非常に面白い。映画に必要か否かに論じている人もいるが、イーストウッドの過去の作品を観ていれば、当然必要と答える。クリント・イーストウッド作品にはラブシーンが多いのだ。ソンドラ・ロックを始め、『恐怖のメロディー』ではジェシカ・ウォルター、ドナ・ミルズ、『ペイルライダー』ではキャリー・スノッドグレス、そして『マディソン郡の橋』ではメリル・ストリープ。その他、たくさんあるので今度まとめてみようと思う。

クリント・イーストウッドの私生活もまたエネルギーがある。

下世話であるがクリント・イーストウッドの私生活も奔放だ。二度の結婚で子どもが8人いる。しかも5人の女性との間に設けている。最後の子どもが66歳の時だから今も現役と言われても納得できる。だから映画の中で女性とベッドを共にするのは「まだまだ若いモンには負けないぞ」というメッセージを送っているように見えるのだ。凄すぎる。

ブラッドリークーパーとクリント・イーストウッドの共演は名場面だ

もう一つ、ベイツ捜査官演じるブラッドリークーパーとのバーでのやり取り。これから未来ある若者に対して、仕事などより家族を大切にしろといく辺りが何とも言えない。イーストウッド自身、映画に人生を捧げてきて、決して家族を大切にしていない。同じ映画界で生きるクーパーに対してそのことを伝えてる場面がとても感慨深い。クーパーは恐らくではあるが、クリントイーストウッドの意志を引き継いで映画をリードしていく人間であろう。だからこそあの場面が非常に胸が染みた。未来に何度もリプレイされる名場面だろう。

実際のレオ・シャープは仕事を全うしただけだ。

イーストウッド演じる実際のレオ・シャープは罪の意識があったのだろうか。おそらくではあるが皆無だと思う。彼は仕事として行ったのだ。そして『運び屋』という仕事の対価をもらっただけなのだ。法廷での証言でも言っている。「あなたのせいで多くの薬物中毒者が出た。それについてどう思う?」「もう過去のことだ」からと答えている。そして犯罪組織のメキシコのカルテルについての詳細はほとんど語っていないそうだ。そういった意味では仁義を着るというか、仕事を遂行した満足感があるのだろう。

クリント・イーストウッドの次作を期待している。まだまだ続くだろう。

さてさて、まだまだ本作は大ヒット上映中である。あと何回、劇場へ足を運ぶかわからないが、イーストウッドはまだまだ撮り続ける予感がする。映画では背中を丸めて、ヨボヨボ、シワシワの雰囲気だが、インタビューを観るとめちゃくちゃ元気だ。肉体的にも精神的にも問題なのだ充実しているらしい。

次作は実話も良いが、出来れば今一度ドラマ作品を見たいと願っている。

これほど素晴らしい映画人はもう今後出てこないだろう。

これが遺作にならないことを祈りたい。

あと1本くらいお願いします。

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映画のことなら映画.comより引用

スタッフ

監督クリント・イーストウッド 製作クリント・イーストウッド
ティム・ムーア クリスティーナ・リベラ ジェシカ・マイヤー ダン・フリードキン ブラッドリー・トーマス
製作総指揮 アーロン・L・ギルバート
原案サム・ドルニック
脚本ニック・シェンク
撮影イブ・ベランジェ
美術ケビン・イシオカ
衣装デボラ・ホッパー
編集ジョエル・コックス
音楽アルトゥロ・サンドバル

キャスト
クリント・イーストウッド アール・ストーン
ブラッドリー・クーパーコリン・ベイツ捜査官
ローレンス・フィッシュバーン主任特別捜査官
マイケル・ペーニャトレビノ捜査官
ダイアン・ウィーストメアリー
アンディ・ガルシアラトン
イグナシオ・セリッチオフリオ
アリソン・イーストウッドアイリス
タイッサ・ファーミガジェニー
ユージン・コルデロルイス・ロカ
ローレン・ディーンブラウン捜査官
グラント・ロバーツDEA捜査官
ピート・バリスDEA地方担当官
ロバート・ラサードエミリオ
ソウル・ウエソアンドレス
リー・コック突撃銃の男
ノエル・Gボールド・ロブ
クリフトン・コリンズ・Jr.グスタボ
ダニエル・モンカダエドアル
ポール・リンカーン・アラヨサル
作品データ
原題 The Mule
製作年 2018年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 116分
映倫区分 G

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