ペネロペ&ハビエル&アスガー・ファルハディ監督 映画『誰もがそれを知っている』ネタバレ・あらすじ・評価・感想。

2019年製作
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映画「誰もがそれを知っている」
隠していたはずの秘密と家族の嘘がほころび始めるーその結末に誰もが息をのむ、極上のヒューマン・サスペンス。監督・脚本:アスガー・ファルハディ 出演:ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム 原題:Everybody Knows

映画『誰もがそれを知っている』(133分/西・仏・伊/2018)

原題 Todos lo saben

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映画『誰もがそれを知っている』の作品情報

こちらは第二回目の感想です。かなりのネタバレがありますので、第一回目からお読みください。

以下、その①

ペネロペ・クルス主演映画『誰もがそれを知っている』ネタバレ、あらすじ、評価。知らないフリをするのが優しさ。
映画『誰もがそれを知っている』は人間とは人の秘密を知りたい生き物である、それとも秘密を知ることで自分と他者を比べることで自己満足する生き物なのであるとのメッセージにも聞こえる。秘密を知った感情をコントロールすることはとても重要であり、それが決壊すると全ての調和が崩れ、もう元には戻れない危険性を帯びている。

 

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映画『誰もがそれを知っている』の感想と評価その②

映画『誰もがそれを知っている』は紛れもない名作になると思う。

上映期間中、あと何度足を運ぶかわからない。いや楽しみになってきた。

この映画を観終わってから帰路につくあいだ、ドアを開けてシャワーを浴びても、ベッドに入ってもずっとこの映画がまとわりついてくるのだ

“寝ても覚めても”状態なのだ。

いくつか発見があった。前回観て、疑問に残った箇所を改めて観たが、再び新たな疑問を見つけてしまった。例えば秘密について。

ラウラ(ペネロペ・クルス)

*かつてパコと恋人同士であった。→村の人は全員知っている。
*アルゼンチンへ嫁いだ理由はなに?→村の人は金目当ての結婚と思ってる。
*パコに土地を売った理由は?→おそらく夫アレハンドロとの事業のためか。
*娘のイレーネは誰の子ども?→村の人はみんな知ってる。パコのみ知らない。

パコ/ラウラの夫(ハビエル・バルデム)

*ラウラと恋人関係にあった。→村の人は全員知っている。
*妻のベアを愛しているのか?→愛している。でも村の人はパコはラウラへの想いがあると思ってる。
*土地はどうやって手に入れた。→ラウラから正規に買った。村の人はラウラの弱みを握って安く買ったと思っている。

アレハンドロ/ラウラの夫(リカルド・ダリン)

*かつてアルコール依存症であった。→誰も知らなかった。話すとすぐ噂は広まった。
*倒産して無職。→村の人は金持ちだと思っていた。嫉妬している。
*娘イレーネの出生の秘密は知っている→村の人はラウラに騙されていると思っている。
*神を信じている。→村の人も一応、神を信じている。

イレーネ/ラウラの娘(カルラ・カンプラ)

*好奇心旺盛→酒、タバコ、性的な興味が強く大人への憧れがある
*教会の屋上の時計台部屋でラウラの秘密を知る
*本当の父親はアレハンドロと思っていた→しかし、、、
*誘拐されて心に大きな傷を負う→一生涯に渡っての秘密になる

ベア/パコの妻(バルバラ・レニー)

*パコとラウラの過去は知っている。→正直、心地よくない。
*パコがラウラに未練があると勘ぐっている。→ラウラの帰郷は歓迎できない。
*子どもがいない理由は?→体質的な問題か、、、。村の人は噂しているが、、、
*イレーネが誰の子どもか知らなかった、いや信じたくなかった。

アントニオ/ラウラの父(ラモン・バレア)

*かつては地主であったが土地を失った理由は?→博打、酒と遊び呆けて財産を失った。
*村の人から好かれているのか。→村人が蔑んだ目で見ているから、ノーだ。
*土地をパコに安く買い叩かれたのか。→ラウラが安く売ったから、ノーだ。
*クズ男につき、秘密もない、噂する価値もない。

アナ/結婚するラウラの妹(インマ・クエスタ)

*姉ラウラを好きか→おそらく好きだと言える
*この村を好きか→閉鎖的な村から出られることを嬉しく思っている
*結婚する相手は→カルターニャ人。村人からバカにされている。

マリアナ/ラウラの姉(エルビラ・ミンゲス)

*この村が好きか→たぶん嫌いだろう。村を出たかったが父の面倒があって、、、
*ラウラのことをどう思っているか→村を出られて羨ましい。
*アナについては→同じく羨ましい
*父のことは→酒浸りで重荷になってる
*娘ロシオについて→厄介な男に捕まってしまったと心配
*娘ロシオの秘密を知ってしまった→黙っていられるか
*夫フェルナンドについて→非常に仲が良い

フェルナンド/マリアナの夫(エドゥアルド・フェルナンデス)

妻にも義父にもラウラ、アナ、パコ、村の人ともうまくやっている。一見、秘密がないように見えるが、、、。最後の最後で大きな秘密を共有することになってしまう。

ロシオ/ラウラの姪で、マリアナとフェルナンドと子ども(サラ・サラモ)

*村を出たい→閉鎖的だから
*夫はドイツで仕事へ→嘘だった。
*離婚する予定→嘘だった。実際は仲が良かった
*子ども一人→お金が欲しい
*ラウラについて思ってること→金持ちと結婚できて羨ましい
*イレーネについて→誰の子どもか知っている
*パコについて→お金を持っている

ホルヘ/元警官(ホセ・アンヘル・エヒド)

*元警官で村の情報通。

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つまり『誰もがそれを知っている』は“誰もが知りたい”のだ

この映画に限らず我々も多くの秘密を持っている。

秘密は自分だけ、あるいは信頼する人と共有するものであって、外部に漏れていたら、それはすなわち秘密ではない。

ということからこの映画では秘密にしていることは大抵の人は知っているのだ、と説いている。

誰かの秘密を知ってしまってもそれを本人に「知っているよ」と伝えなければそれは秘密であると言えるのだ。“知らぬが仏、見ぬは秘事”状態は実は幸せなのだ。

秘密が招く危険な集団意識もある

ただ秘密がとても悲惨なことである場合、人は憐れみ優しく接する。

でもお金に関することや下世話な男女関係、卑怯なことになると、人々は嫉妬したり、嘲笑したり、憎悪の対象になる。

本作は正にこれに当たる。ラウラに降りかかった災難を辿っていくと、父親に行き着く。ラウラの父アントニオはかつて村では大きな土地を所有して映画を誇っていたと思われる。

父親が謙虚であったなら起こり得なかった事件ではないか

しかしながら博打や酒で全てを失ってしまった。

村の人たちは内心「ざまーみろ」と思っているだろう。大地主として小作人を使い威張り散らしていた性格がこの映画から見受けられる。

とても横暴なのだ。

しかも過去の栄光と既得権益にしがみついている。村の人は表面上は穏やかな応対をするが、陰では悪口三昧だろう。

“もし”は愚問の問いだが、父親が誰にも謙虚に優しく接していたらこんなことは起こらなかっただろう。

さて、上気した各々の秘密を紐解いて行こう。

ラウラは若い頃からお転婆で奔放な女性だったのだろう。それは娘イレーネを見ればわかる。

容姿の良い。性格も明るい。

たぶん、村の男たちのアイドル的存在であっただろう。パコと恋に落ちたがアレハンドロと出会いあっさり捨てる(たぶん)村の女たちは面白くないだろう。

ラウラ

ラウラの握っている最大の秘密はイレーネの出自。最終手段の取引としてパコに詰め寄る。娘を愛するとはいえ、酷い仕打ちだ。

パコ

そしてパコ。そのアイドルをパコが奪った。村の男たちの嫉妬は激しい。しかもパコは使用人の息子。村の人々は表面上はニコニコしているが内心は面白くないと来る。女たちも面白くないだろう。パコはそれなりに良い男。それをラウラが持って行ってしまうからだ。16年間、ラウラとイレーネのことを知らずに過ごす。村人は噂をしていた。

アレハンドロ

アレハンドロがどのようにラウラとい恋に落ちたかはわからない。出会った当初はビジネスで成功していた。そしてラウラと結婚した。お金を持っていることが村の人に知れると村人は嫉妬するだろう。「またラウラだけが良い思いを!」でもアレハンドロには秘密があった。アルコール依存症だ。しかしラウラが妊娠したことで酒をきっぱり止める。神のご加護を受けて。娘イレーネの秘密を受け入れる。しかしその後、倒産。今は無職という秘密。

イレーネ

イレーネ。ラウラ同様にお転婆で天真爛漫。すぐに村の若い男の子と仲良くなる。そして誘拐されて大きな傷を負った。一生、抱え込むだろう。これは秘密ではない。村ではずっと噂される可能性がある。もう二度と村にを訪れないだろう。

ベア

ベア。パコのぶどう農場も手伝いながら施設で働いている。パコのことを愛している。子どもを欲しかったいない。村に帰ってきたラウラとあった時の視線に羨望と引け目が見受けられる。パコとの関係を知っている。まさかイレーネが、、、、最後まで信じたくないようだった。ラウラに対して強烈な対抗意識を持っている。彼女の秘密は子どもができないことか、、、。

アントニオ

アントニオはどうしようもないダメ男だ。過去、よほど村人に酷いことをしてきたのだろう。自分の立場がわかっていない。秘密などもうないだろう。秘密がなくなった人間とは憐れだという見本。もはや噂の肴にもならないクズ男。

アナ

アナは結婚してようやく村を出ることができる。これといった秘密はないが、強いて言えばカタルーニャの男と結婚することだ。スペインではカタルーニャ人のことを卑下する習慣がある。村の人たちは陰で悪口を言っている「カタルーニャへ嫁ぐなんて」と。

マリアナ

マリアナは一番気の毒な女だ。ダメな父親の面倒を見なければいけない。娘もダメ男と結婚した。孫が一人。面倒も見ている。父、夫、娘、孫の面倒で疲れ切っている。秘密を持つほど余裕がない。しかし最後の最後で最も重たい秘密を知ってしまう。夫のフェルナンドだけに話したのか、話さなかったのか。話した時点で秘密ではなくなるだろう。そしてそのことは村の人たちの“公然の秘密”になってしまう。この後の一家はどうなるのだろう。

フェルナンド

最後の最後にマリアナから最大の秘密を打ち明けられる。人生最大の出来事だろう。

ロシオ

ロシオ。叔母のラウラのことを羨ましく思っている。自分も村を出たい。そして出るつもりでいる。夫がガブリエルはドイツへ行ってしまった。不仲で離婚する予定と嘯く。誘拐事件の混乱の中、一人だけ冷静に見守っている。一番、大きな秘密を持っていることが明らかになる。

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映画『誰もがそれを知っている』まとめその②

この映画はサスペンスミステリーではない。

アスガー・ファルハディ監督はインタビューで言っている。

誰が犯人なのかはどうでも良いのだ。人間の心理を丹念に描いている。

羨望、嫉妬、比較、憎悪へと繋がる流れは本のちっぽけな噂から始まる恐ろしさや、他人を認めない人間の愚かしさについて、心が痛くなるほど訴えてくる。

まだまだ、謎解きが終わらない。もう一回、映画館へ足を運びたい。

*最後、ラウラがイレーネと再会した後、とっととアルゼンチンへ帰国してしまう。「おいおいパコに感謝しろよ」とか「犯人捕まえろよ」とか考えがちだ。

でもラウラはあの瞬間でもう村を捨てたのだ。「もう二度とこんな村に帰ってこない」という決意が見える。

なぜなら愛する娘が陵辱された村であること、そしてその噂は未来永劫まで語られるからだ。決別の急ぎ足だ。ひょっとしたら誰が誘拐したのかも知っているのかもしれない。

つづく

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映画『誰もがそれを知っている』まとめ 一言で言うと!

「知らぬが仏、見ぬが秘事」とでも言おうか。

知らぬことは優しさの証明。大切な秘密を知ってもそれを暴露しないことが平和的に暮らす最良の策だ。秘密が弾けてしまうと“覆水盆に帰らず”だ。だから覚悟しておけ、となる。

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映画『誰もがそれを知っている』の作品情報

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ

監督
アスガー・ファルハディ
『セールスマン』(17)『ある過去の行方』(14)『別離(2011)』(12)『彼女が消えた浜辺』(10)

製作
アレクサンドル・マレ=ギィ アルバロ・ロンゴリア
脚本
アスガー・ファルハディ
撮影
ホセ・ルイス・アルカイネ
美術
クララ・ノタリ
衣装
ソニア・グランデ
編集
ハイデー・サフィヤリ
音楽
ハビエル・リモン
キャスト

ペネロペ・クルス
『ハモンハモン』『オール・アバウト・マイ・マザー』『バニラ・スカイ』『ボルベール帰郷』『それでも恋するバルセロナ』

ハビエル・バルデム
『夜になるまえに』『ノーカントリー』『それでも恋するバルセロナ』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』

リカルド・ダリン
『泥棒と踊り子』『瞳の奥の秘密』『しあわせな人生の選択』

エドゥアルド・フェルナンデス
『スモーク・アンド・ミラーズ 1000の顔を持つスパイ』『BIUTIFUL ビューティフル』『チェ 39歳 別れの手紙』

バルバラ・レニー
『マジカル・ガール』

インマ・クエスタ
『スリーピング・ボイス 沈黙の叫び』『ジュリエッタ』

エルビラ・ミンゲス
『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』

ラモン・バレア
『マカロニ・ウエスタン 800発の銃弾』

カルラ・カンプラ
『Marsella』『Veronica』

サラ・サラモ
『失われた少女』

ロジェール・カサマジョール

ホセ・アンヘル・エヒド
『ローマ法王になる日まで』

作品データ

原題 Todos lo saben
製作年 2018年
製作国 スペイン・フランス・イタリア合作
配給 ロングライド
上映時間 133分
映倫区分 PG12

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