笑いと涙『バジュランギおじさんと、小さな迷子』サルマン・カーンが贈るインドとパキスタンの和平への道 ネタバレ、感想

2019年製作
スポンサーリンク
漫画「関西弁男友達とぐちゃとろマッサージ」を無料で読める配信サイトを徹底調査 |

『バジュランギおじさんと、小さな迷子』(159分/印/2015)
原題  Bajrangi Bhaijaan

スポンサーリンク

インドとパキスタンのデリケートな問題に挑んだ勇気ある作品であるが、涙あり、笑いありと存分に楽しめる。歌って踊って幸せになれる

インド映画がこれほど世界的にヒットするのは娯楽を極めたからではないか

 ここ数年、インド映画を積極的に観るようにしている。理由は仕事でインド、パキスタン系の人と知り合ったからだ。昨年は『ガンジスに還る』『パッドマン5億人の女性を救った男』『ダンガル きっと、つよくなる』を観た。どれも面白かった。まあ、お決まりと言ったらそれまでだが、歌って踊って走って、泣いて怒ってと笑ってと全てが詰め込まれている。インドではやっぱり映画こそがエンターテイメントであり、ストレス発散のメディアなのだろう。

 あと『英国総督最後の家』を観た。インド、パキスタンの独立を描いた作品で、こちらは政治や宗教対立も描かれていて、興味深かった。私の知り合いはパキスタン人であるが、半世紀前まではインド人であった言っている。つまりイギリスの植民地時代は一つだったのである。しかしイギリスは大戦後、国力が弱体化したため管理不可となり、インドとパキスタンを分割し独立を促せたのだ。これが現在でも大きな火種になってしまった。両者は民族的には近い、言語も動揺する人もいる。だが宗教が全く異なる。インド人はヒンズー教、パキスタン人はイスラム教を信仰している。この信仰の違いは大きな騒乱の元になる。両国の独立の際には、それまで平和に暮らしていた隣人でさえ、敵になって戦ったというから相当なものだ。憎しみが憎しみを増大させるから永遠に解決できないと言われている。

どこの国にでも親切な人は必ずいる。人を疑うことを知らない少女の聡明さを見習いたい

 さて、映画はパキスタンの山村で生まれた口のきけない娘を母親がインドの優秀な医者に診てもらおう列車の旅に乗る。しかし女の子は行方不明になってしまう。ひょんなことからインド人で人の良いおじさんが彼女を助け、パキスタンの彼女の家まで送る決意をし、命がけで国境を越えていく物語だ。様々な難関が待ち失せる。日本では考えられないようなことばかりだ。もし日本で迷子の子供を見つけたのならすぐ様、警察に連絡すると万事解決へ向かう。しかしインド、パキスタンでは中々難しい。少し出てくるが女の子を売るというとんでもないこともあるらしい。誰を信じて良いのかわからないから、直接送り届けた方が安心なのだ。

 お涙頂戴ものだが、インド映画の常道を行くので楽しめる。歌って踊ってる場面を見るだけで気持ちが明るくなる。良くあんなに器用に踊れるものだと感心するし、音色もエスニックで、更に詩がまた良いのだ。随所に哲学的な表現がある。さすがインド五千年の歴史だ。もちろん人生は楽しむものだと伝わってくる。テレビやインターネットは普及しているが、インドでは未だに映画こそが一番の娯楽であるのが羨ましい。ただインド映画に慣れない人には辛いかもしれない。

喋らない少女の気持ちを分かち合おうとする姿にこの映画の本質がある

 この映画の制作者であり主人公のサルマン・カーンはインドで大人気の俳優である。彼は本作をキャリアの中で一番の作品と言っている。それはインド人、パキスタン人、ヒンズー教、イスラム教と相違はあるが、愛をいう感情は同じであると言っている。長年、両国は対立してきているが、憎しみではなく愛を持って共存しようというメッセージを送っている。それは素晴らしいことだ。映画の最後の最後お約束がある。ちゃんと少女が演じてくれる(アルプスの少女ハイジに近い)

 インドの広大な土地を南北に縦断して撮影は行われいる。特に北部の山あいは美しい。青い空を背に雄大な山脈が立ち上り、白い雪を纏っている。牧歌的な谷あいにヤギの鳴き声に響き渡り、ヒマラヤから流れ出るエメラルドの川が命を育む。前半のデリーの人混みから解放されて爽快な気持ちにさせてくれる。

 さて、冒頭に書いたが私の友人のパキスタン人に映画のことを聞いたことがあるが、パキスタン人はインド人と違ってあまり映画を観に行かないとのことだ。中々、難しい問題がある。でも映画の中で子供が登場するが、子供同士は異教徒であろうとなかろうと仲良くしているのが救われた。何か判断する時は子供に聞くほうが素直なのではないかと改めて感じた。

 この少女のように黙っていた方が、大人は分かり合えるということだ。

created by Rinker
コロムビアミュージックエンタテインメント
created by Rinker
コロムビアミュージックエンタテインメント
スポンサーリンク

『運だぜ!アート』本日の総合アクセスランキング

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』のあらすじ・ネタバレ「グッズが欲しくなる」解説「 興行収入好調!」感想「荒木飛呂彦漫画」評価
映画『第三夫人と髪飾り』ネタバレ・あらすじ「一夫多妻の時代“愛のレッスン”は芸術的“官能美”」感想「新しい才能アッシュ・メイフェア監督登場」結末「現代ベトナム女性は自由?」
映画『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』ネタバレ・あらすじ・感想・結末。
映画『楽園』ネタバレ・あらすじ・結末。ムラ社会は日本社会の縮図。長老(独裁者)の「決めつけ」こそ悪害なのだ。綾野剛、佐藤浩市もOKだが村上虹郎が最高だ!
映画『夕陽のガンマン』ネタバレ・あらすじ・感想。クリント・イーストウッドもカッコいいが、いぶし銀リー・ヴァン・クリーフには痺れてしまう
不条理すぎる映画『ドッグマン』実話の解説・感想・ネタバレ・あらすじ・評価。マッテオ・ガローネ監督の描く人間の本質は闇だ。
映画『Wの悲劇』ネタバレ・あらすじ「薬師丸ひろ子最高!」感想「三田佳子vs世良公則&高木美保共演」結末「蜷川幸雄絶好調」その後『バブルの悲劇』が日本を襲う
映画『糸』ネタバレ・あらすじ・感想・結末。中島みゆきさんの「評価はいかに?」小松菜奈&榮倉奈々最高演技!音楽勝ち映画決定版!
実話映画『愛と死をみつめて』ネタバレ・あらすじ「創価学会の意味?」感想「笠智衆が泣く」感想「軟骨肉腫で死亡」結末。
映画『さくら』ネタバレ・あらすじ・感想・結末。「兄弟愛は禁断?」北村匠海&吉沢亮&小松菜奈共演の贅沢映画。「さくらの“脱糞”が招く幸せ!」

【宗教観について考える映画】

映画『歎異抄をひらく』

親鸞聖人の考えをわかりやすく映画にしました

映画『歎異抄をひらく』親鸞聖人を読み解く時代 石坂浩二 ネタバレ・あらすじ・感想・評価 生きる意味とはなんだ!
人はなぜ生きているのか?という問いに立ち止まる時がある。多くは人生の終盤を迎えて過去を振り返ることで“死”の準備をしている気がする。本作は『歎異抄をひらく』はそう言う疑問に答えている。親鸞聖人の弟子たちが書き残した名著をわかりやすくアニメで説明している。人間は誰もが悪人であると言うショッキングな言葉から始まる。

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』

宗教上の問題で女性の性がタブーとされている

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』は愛妻家の鏡。女性の地位向上に貢献。作品情報・ネタバレ・あらすじ・感想・評価
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(137分/印/2018) 原題  『Padman』 宗教的な理由で生理用品が使えない人たちが未だに多くいる。一人の男がタブーを破って挑戦した勇気はインドに光を与えた。パッドマンは英雄だ。 最初は愛する...

映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』

この世は宗教とか哲学とか概念など越えた進歩しなければ、、、

映画『ヒューマン・フロー 大地漂流』中国の現代美術家・社会運動家のアイ・ウェイウェイが世界を漂流する
中国人現代美術家であり人権活動家のアイ・ウェイウェイ(艾未未)が世界の難民施設を撮影する。映像は固定ショットが多く美しい。しかしこう言った映画に美しさは必要かどうかについて疑問を感じる。難民の現状を映し出すがどこか無機質に感じる。傍観者になりそうだ。

映画『ヒア アフター』

臨死体験でたどり着いた独特の世界観

映画『ヒア アフター』の津波はCG。クリント・イーストウッドは来世を描く。来世への入り口で彷徨う人。感想、ネタバレ、感想。
死後の世界はあるのだろうか。いわゆる来世である。人間は死んでからの世界を想像している。つまりいつまでも“生きていたい”のだ。永遠の命が欲しいと言う想いから生まれた想念だが、実際に臨死体験をすると死後の世界があるように思えてくる。この作品は三人の青年、少年、女性が死についての想いを巡らせることで自らの人生を考えるものだ

映画『魂のゆくえ』

キリスト教の牧師が禁断の恋に挑む

イーサン・ホーク主演『魂のゆくえ』はポール・シュレイダー監督最高傑作。『地球のゆくえ』とも言える作品である。ネタバレ・あらすじ・評価
ポール・シュレイダー監督作品。50年の構想を得て書き上げた脚本を自ら監督した映画。教会の牧師があバリーコーガンつ夫婦との出会いによって自らのアイデンティティーについて深く考える。また自分のせいで戦死した息子への悔恨の思いが強く、自身も死へと向かう刹那的な物語だ。人間のせいで地球は破壊へと向かう。それを止めるべく取った行動とは、、、。

映画『ある少年の告白』

父親が牧師。でも自分がゲイであることに悩み、生き方を見つける

映画『ある少年の告白』LGBTへ理解を深めてくれます。ネタバレ、評価、あらすじ。
近年LGBTに関する映画が多く公開されている。今まで差別されてきた歴史もあるが、なぜこれほど多作されているのかを考えてみる。特にアメリカでは性的マイノリティーへの差別意識が高いことに改めて驚いた。その背景にはキリスト教プロテスタントの一派であるバプティスト教会の影響が大きい。本作を観ることでトランプ大統領とアメリカが観えてくる。

映画『幸福なラザロ』

悲しきラザロの物語

イタリア映画『幸福なラザロ』の純粋無垢な瞳に癒される。宗教的な内容もあるが理解できる。ネタバレ、評価。
映画『幸福のラザロ』はイエスの友人であり聖人のラザロを現代に蘇らせ、人間とは何か?人間はなぜ生まれて、どこを目指し、なぜ死んでいくのかを刹那的に描いた作品である。ラザロ演じるアドリアーノ・タルディオーロの純粋無垢な瞳が切ない。人のためならどんな苦行でも行う自己犠牲の精神に心が揺り動かされる。宗教的なメッセージは深く勉強になる。

【オススメ インド映画】

映画『あなたの名前を呼べたなら』

身分の差を超えた愛の物語

インド映画『あなたの名前を呼べたなら』身分を越えた恋物語の行方は?差別、貧困とカースト制度について考えてみる。ネタバレ・あらすじ・感想・結末・評価
カースト制度が色濃く残るインドで身分の差を越えた恋愛物語を女性映画監督ロヘナ・ゲラが描いた。監督曰く、現在では絶対に起こりえない恋物語だそうだ。監督は絶望的な差別、貧困に悩む庶民がいつか自由を手に入れ、幸せに暮らせる日を願って作ったのだろう。インド映画にしては歌、踊りの演出が抑えられ、おしゃれな作りになっている。

映画『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

笑いと涙『バジュランギおじさんと、小さな迷子』サルマン・カーンが贈るインドとパキスタンの和平への道 ネタバレ、感想
インドとパキスタンはかつては一緒の国だった。それがイギリス没落と共に双方が独立することになった。これが悲劇を生み出したと言われている。確かに宗教の違いは大きい。ヒンズーとイスラム。しかし両者は数百年も平和に共存していたのだ。それがなぜ争うことになったのかをこの機会で考えてほしい。争いの原点を知れば世界の仕組みもわかってくる。

インド人青年とパキスタン少女の心温まる物語

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』

妻を愛する想いがインド人女性を救う

映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』は愛妻家の鏡。女性の地位向上に貢献。作品情報・ネタバレ・あらすじ・感想・評価
『パッドマン 5億人の女性を救った男』(137分/印/2018) 原題  『Padman』 宗教的な理由で生理用品が使えない人たちが未だに多くいる。一人の男がタブーを破って挑戦した勇気はインドに光を与えた。パッドマンは英雄だ。 最初は愛する...

映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』

無償の愛でアジア人を見つめた

絶対王室!『ヴィクトリア女王 最期の秘密』無償の愛でアジア人を見つめた
差別と偏見が蔓延る時代に大英帝国のヴィクトリア女王が有色人種であるインド人を召使いに、そして助手にした。取り巻き連中は大慌てする。何とか女王に気持ちを変えようと奔走するが無理。女王はやがてイスラム教のコーランとウルドゥ語を学び始まる。国家元首のこの行動に大英帝国自身が揺れ動く。

映画『英国総督 最後の家』

インドどくりつへ向かう最中、、、

『英国総督 最後の家』
『英国総督 最後の家』(106/英/2017) 原題 『Viceroy's House』 かつてヨーロッパの国々はインドを目指した。一度、インドを手にしたら手放すことは国力が衰える。何としてもインドを死守しなければいけない理由がある。 祝福...

映画のことなら映画.comより引用

スタッフ
監督 カビール・カーン
製作 サルマーン・カーン カビール・カーン スニール・ルーラ ロックライン・ベンカテーシュ
原案 V・ビジャエーンドラ・プラサード 
脚本 カビール・カーン パルベーズ・シーク V・ビジャエーンドラ・プラサード
撮影 アセーム・ミシュラー
美術 ラジニーシュ・ヘダオ
編集 ラメーシュワル・S・バガト
音楽プ リータム・チャクラボルティー

キャスト
サルマーン・カーン パワン
ハルシャーリー・マルホートラ シャヒーダー
カリーナ・カプール  ラスィカー
ナワーズッディーン・シッディーキー チャンド・ナワーブ
シャーラト・サクセーナ ダヤーナンド
オーム・プリー

タイトルとURLをコピーしました